水道水か、歯磨き粉かー子どもの虫歯予防最前線
皆さん、こんにちは。
7月5本目ですね。この暑い日々をどうお過ごしでしょうか。
現在日本に滞在していますが、暑さはそこまでカリフォルニアと変わらないのですが、とにかく日本は湿気が多いですね。まるでサウナの中にいるようで、日中活動時に身体がベトベトになります。
しかしシャワーをさっと浴びるだけで心地よくなりますから、出かける最中にサウナに少し入るというのも理解できることです。
さて今回は日米の子どもの歯の事情について深掘りします。
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米国で直面した子どもの歯問題
アメリカで子育てをしていると、日本との違いに驚くことがいくつもあります。その一つが、歯の健康でした。
米国はご存知の通り国民皆保健ではないので、個人で保険に加入する必要があります。私も所属先の医療保険に加入しており、Dental(歯科保険)にも加入しています。
そんな中、次女がある日「歯が痛いわけではないけど、違和感がある」と言ってきました。ひょっとして虫歯かも?と思い、歯科保険が使える近くの歯医者に受診しました。
すると、案の定、歯が2本虫歯になっていました。
もうすでに全て永久歯に変わっている次女は、虫歯になっているからといって簡単に抜くことはできません。そこで根管治療(Root Canal Treatment)を提案され、2本治療をする前に見積もりを出してもらいました。
すると、なんと2574.5ドル、日本円にして42万円でした!(笑)
子どもの歯を2本治すのに42万円とは何事ぞ!

当然保険負担が984ドルありましたが、患者である我々が負担する金額はそれでも1590ドル、26万円となっていました。
こりゃ、みんな虫歯にならないように予防するわな。。
ご存知の通り、アメリカの多くの街では、蛇口をひねって出てくる水道水に、虫歯予防のためのフッ素があらかじめ加えられています。一方、日本の水道水にはフッ素はほぼ加えられていません。
今回のテーマは、子どもの虫歯とフッ素をめぐる日米の違いです。今回は以下の3つのテーマに絞って解説していこうと思います。
①なぜアメリカは水道水にフッ素という政策を選び、それを支えたエビデンスは何か、
②その効果はいま、どう評価されているのか
③そ家庭でフッ素を安全かつ効果的に使うにはどうすればよいのか
先に、この記事の背骨になる一つの事実をお伝えしておきます。それは、「フッ素が虫歯を防ぐこと自体は、非常に確かなエビデンスに支えられている」ということです。議論があるのは、フッ素そのものの是非ではなく、それをどんな形でどれくらい届けるのが最適か、という点です。水道水か、歯磨き粉か、学校の洗口か。低い濃度か、高い濃度か。
日米の違いは、まさにこの届け方の違いと言えるでしょう。詳しく見ていきましょう。
なぜアメリカは「水道水にフッ素」を選んだのか
始まりは、ある歯のシミの観察だった
物語は20世紀初頭のアメリカにさかのぼります。
ある地域の住民の歯に、独特の白い斑点が多いことに歯科医が気づきました。調べていくと、その地域の飲み水に天然のフッ素が多く含まれていること、そして興味深いことに、そうした人々は歯にシミがある一方で、虫歯が少ないことが分かってきました。
フッ素は、多すぎれば歯にシミを作るが、適量なら虫歯を防ぐのではないか。これが公衆衛生史に残る大きな政策の出発点になります。
そして1945年、アメリカで世界初の計画的な水道水フッ素化(コミュニティ・ウォーター・フルオリデーション)が始まりました。
これは天然に多すぎたフッ素で斑状歯が起きるなら、逆に虫歯予防に最適な、控えめな濃度を人の手で加えればよいのではという発想です。以来、この施策は世界のおよそ25か国で行われ、多くの保健当局が虫歯予防の要であると位置づけてきました#1。蛇口をひねるだけで、貧富や歯磨き習慣、歯科への通いやすさにかかわらず、地域の全員がフッ素の恩恵を受けられるのです。本人が特別に努力しなくても、暮らしのなかで自動的に守られる、本人の努力に頼らない対策の考え方は、虫歯予防でも強力です。
そしてこの誰も取りこぼさない公平性こそ、水道水フッ素化が公衆衛生の代表的成功例と讃えられてきた理由でした。
古い研究が示した「大きな効果」
では、この政策を支えたエビデンスとは、どれほどのものだったのか。
フッ素化された水と、されていない水を飲む集団を比較した研究をまとめたコクランのシステマティックレビューはで155もの研究を精査し、水道水フッ素化を開始すると、子どもの乳歯の虫歯(dmft)が平均1.81本減り(比較群に対して約35%減)、永久歯の虫歯(DMFT)が平均1.16本減った(約26%減)と報告されています#2。
さらに、虫歯のない子どもの割合が、乳歯で15%、永久歯で14%増えていました。虫歯が3割前後減るというこの数字は、たしかに大きな効果であり、なぜこの施策が20世紀の公衆衛生の偉大な達成の一つに数えられてきたかを知る事ができます。
もっとも、レビューの著者たちは結果の解釈に気をつけてと注意書きも付けています。
これらの研究の多くは、比較のしかたに偏り(バイアス)が入りやすい古い観察研究であり、効果の大きさそのものは慎重に受け止める必要がある、というのです。そして何より、次に述べる時代の問題があります。これらの研究の大多数は、1975年より前、つまりフッ素入り歯磨き粉が広く普及する前に行われたものでした。当時は、フッ素を口に入れる手段が水道水くらいしかなかったというわけです。
フッ素はなぜ虫歯を防ぐのか
そもそもフッ素は、どうやって虫歯を防ぐのでしょう。
虫歯は、口の中の細菌が糖を分解して酸を作り、その酸がエナメル質という歯の表面を溶かすことで進みます。フッ素は、この攻防に二つの形で介入します。一つは、溶けかけた歯の再石灰化を助け、エナメル質を酸に溶けにくい丈夫な結晶に変えること。もう一つは、細菌の酸産生をある程度抑えることです。
かつては、水道水のように体内に取り込むフッ素が、全身的作用として歯が作られる段階でエナメル質そのものを丈夫にすると考えられていました。しかし現在では、フッ素の虫歯予防効果は、局所的作用として主に生えた後の歯の表面に直接触れることによってもたらされる、という理解が主流です。
口の中のフッ素濃度がわずかに高く保たれているだけで、酸で溶けた歯は修復されやすくなり、溶けにくい結晶へと置き換わっていくというわけです。だからこそ、一度に大量にとることよりも、毎日こまめに低い濃度のフッ素を歯に触れさせ続けることに意味がある、と考えられています。
この体に入れるから歯に届けてることへの転換は、本記事のキーポイントです。水道水フッ素化の効果が小さく見えるのも、歯磨き粉が主役になったのも、そして家庭での使い方ですすぎすぎない事が推奨されるのも、すべてこの一点で説明できます。
水道水フッ素の効果は、いま小さくなっている
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