「学校に行きたくない」と言われたら——9月1日を乗り越えるための科学

今回は新学期に向けたお話です。
今西洋介 2026.08.25
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皆さん、こんにちは。

米国では新学期が始まり、長女も新しい高校生活が始まりました。今のところ楽しそうに行っていますのでホッとしましたが、さすがに新学期開始前日は本人もナーバスになっていました。日本人はほとんどいないですが、中学時代の友達がそのまま行くので、多少は安心していましたが。

そんなこんなで、新学期が始まるこの時期のテーマをご用意しました。

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【注意】この記事には、子どもの自殺に関する統計への言及があります。いま、つらい気持ちを抱えている方、お子さんのことで急を要する心配がある方は、記事を読む前に、こちらにつながってください。24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310、24時間無料)/チャイルドライン(0120-99-7777、16時〜21時、18歳まで)/#いのちSOS(0120-061-338)/よりそいホットライン(0120-279-338、24時間)。電話が苦手なお子さんには、チャットで相談できる窓口(「あなたのいばしょ」「生きづらびっと」で検索)もあります。

夏休みが終わりに近づくと、外来の空気は少し変わります。

「おなかが痛い」

「頭が痛い」

検査をしても異常のない体の不調で受診する子が増え、診察室で問いかけると、ぽつりと「学校に行きたくない」という言葉が聞こえてくる時もあります。

学校に行きたくないと我が子に言われた時に、

「休ませていいのか、背中を押すべきなのか」

「何と声をかければいいのか」

「これは様子見でいいのか、どこかに相談すべきなのか」

こういった不安が過ぎることは子育てしていると感じる事はあるはずです。

今回は、こう言った迷いに向き合うためのものです。

なぜ長期休み明けという時期が子どもにとって特別に重いのか、データは何を示しているのか。「行きたくない」と言われたとき、最初の対応として何が支持され、何が逆効果なのか。そして、家庭だけで抱えず、学校や医療とどうつながればよいのかを、順にたどります。先に一つだけお伝えしておくと、この記事の目的は休ませ方でも行かせ方でもありません。9月1日という新しい日を、親子で安全に越えることです。

第1章 長期休み明けに、何が起きているのか

「9月1日」は、データで裏づけられた危機

「夏休み明けは子どもの自殺が増える」という話を、報道で目にした方は多いと思います。これは印象論ではなく、大規模なデータで裏づけられた事実です。日本の人口動態統計を用いて、1974年から2014年までの41年間、6〜26歳の若者の自殺10万8968件を分析した研究があります#1。日本の学校カレンダーはほぼ全国共通であることを利用して、日ごとの発生数を学期の始まりと重ね合わせたこの研究が示したのは、はっきりとした周期性でした。中学生・高校生の自殺は、4月と9月、学校が始まる時期の前後で急増していたのです#1。

数字を具体的に見てみましょう。

中学生では、夏休みが終わり二学期が始まる時期の自殺は、基準とした7月の週に比べて2倍以上、高校生でも約40%増加していました。そして、この研究のもう一つの重要な発見は、同じ分析を18〜26歳(多くは学校に通っていない年代)で行うと、このパターンが見られなかったことです。

つまり、この周期は季節や気候のせいではなく、学校というカレンダーそのものと結びついているのです。長期休みで一度ゆるんだ張りつめが、始業とともに戻ってくる9月1日前後は、学校に通う子どもにとって、統計的に最も危うい時期の一つなのです。

あわせて、規模感も共有しておきます。日本の不登校の小中学生は、文部科学省の調査で34万人を超え、過去最多を更新し続けています

つまり「学校に行きたくない」は、ごく一部の特別な子の話ではなく、どのクラスにも、どの家庭にも起こりうる、ありふれた出来事だということです。わが子がそう口にしたとき、「うちの子だけがおかしいのでは」と孤立感を深める必要は、まったくありません。

「行きたくない」の背景には、しばしば診断のつく苦しさがある

もう一つ、押さえておきたいデータがあります。

「学校に行きたくない」は、単なる甘えやサボりなのでしょうか。

アメリカで9〜16歳の子どもたちを8年にわたり追跡した地域研究は、不登校を「不安型の登校回避」と「怠学型(いわゆるサボり)」に分けて、精神医学的な背景を調べました#2。

結果は明確でした。

不安型の登校回避がある子どもは、うつ病のリスクが13倍、分離不安症のリスクが8.7倍。怠学型でも、行為の問題やうつとの関連が見られました。そして、両方が混ざったタイプでは、実に88.2%に何らかの精神疾患の診断がついたのです#2。

この研究が教えてくれるのは、「行きたくない」という言葉の裏には、しばしば、本人にもうまく言葉にできない不安や抑うつが隠れている、ということです。腹痛や頭痛といった体の症状、眠れない、朝起きられない、といった形をとることも多くあります。

だから、最初の問いは「どうやって行かせるか」ではないのです。

「この子の中で、いま何が起きているのか」が大事なのです。サボりに見える姿の奥に、それを知っているだけで親御さん達の初動は変わります。

第2章 行きたくないの何が支持され、何が逆効果か

「死にたいくらいつらい?」と尋ねても、悪化はしない

親御さんから最も多く受ける質問の一つが、「『死にたいと思ってる?』なんて聞いたら、かえってその気にさせてしまいませんか」というものです。

これには、はっきりした答えがあります。

自殺について尋ねることが自殺念慮を誘発するかどうかを検証した研究を集めたレビューによれば、調べられたどの研究でも、尋ねられた人の自殺念慮が統計的に有意に増えることはありませんでした#3。

それどころか、自殺について言葉にして話すことは、念慮をむしろ減らし、治療につながる人ではメンタルヘルスの改善と結びつく可能性が示されています#3。

つまり、聞いたら悪化する、というのは誤解です。子どもの様子が心配なとき、つまり食欲が落ちている、眠れていない、口数が減った、「消えたい」「自分なんて」という言葉が出る時には、遠回しに探るより、落ち着いて、まっすぐ尋ねてください。

「死にたいくらいつらい気持ちがある?」と。

もし「うん」という答えが返ってきたら、それはあなたを信頼して打ち明けてくれた介入のチャンスです。驚きや否定で返さず、「話してくれてありがとう」とだけ伝えて、その日のうちに専門窓口(冒頭の相談先、かかりつけ医、地域の精神科)につなぐ行動を起こしてください。

子どもたちを守るものとは

では、日常の関わりでは何が子どもを守るのでしょうか。

ここに、思春期研究の金字塔と呼ばれる大規模調査があります。

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