子どものYoutube、脳に悪いのは何分以上?
皆さん、こんにちは。
いよいよ7月も終わりですね。
ニュースレターも7月最後の配信になります。
日本もだいぶ暑くなりましたね。いつの間にか梅雨明けした割には連日雨の日が続いています。なかなか外出しづらいですね。
お時間のある時に、このニュースレターを読んで頂けたら嬉しいです。
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「スマホやYouTubeを見せると、子どもの脳に悪いって聞くけれど、本当なの?」
「1日何分までなら大丈夫? それとも、いっそ一切見せないほうがいいの?」
これは、2020年代のいま発達外来で最も多くいただく質問の一つです。
ぐずったとき、家事の間、外食のときなどなど、スクリーンはもはや育児の道具となっています。
こういう時代だからこそ、根拠のない不安であおられるのも、みんな見せてるから大丈夫と逆に油断するのも避けたいところです。今日は、この疑問にできるだけ誠実にデータを元に答えます。
今回は①脳に悪いという説の根拠、②なぜ悪影響が出るのか、③では1日何分・どう付き合うか、といった順番に見ていきましょう。
脳に悪い説に、根拠はあるのか
話題のトイストーリー5での新たな敵
皆さんは夏休みの間にどこか映画館に映画を観てきましたか?
私は6歳になる三女に連れられ(長女と次女の後押しもあり)、現在公開中のトイストーリー5を見てきました。トイストーリーは1からずっと家族で一緒に行っているのもあり、今回も映画館で見てきました。
今回のトイストーリーは14歳の長女曰く「過去の作品の中で1番考えさせられた」作品でした。

こういう何気ない記事でネタバレを喰らうのが個人的に1番腹が立つので、あまり詳しく言えませんが、この映画のテーマが「子どもとスクリーン」でした。
映画は詳しく見てもらえたらと思うのですが、自分も過去にいろんなディズニー映画を観てきましたが、これまでに子どものスクリーン問題を真っ向から取り上げたのは初めてではないかと思いました。
予告編にあるように、カウボーイ主人公のウッディの頭が禿げてたり、お腹が出ていたりショックでしたが。。(あの演出は必要だったのか謎)
とにかくあのディズニーが、あのトイストーリーがこの問題を取り上げるなんてと感動したので、是非映画館で観てみてください。
大規模研究が示す「量が多いほど、発達が低い」
では、ディズニーが注目するほどの子どものスクリーンタイムですが有害というのは本当なのでしょうか?
ここには、しっかりしたデータがあります。42の研究・のべ1万8905人の子どものデータを統合したメタ解析によれば、スクリーンタイムが長い子どもほど、言語の発達が低い傾向がありました(相関r=−0.14)#1。とくに、見るともなく点けっぱなしにするスクリーンは、より強い負の関連を示しました(r=−0.19)#1。
ただし、この相関の大きさ(r=−0.14)は、統計的には小さい部類に入ります。ここは正直にお伝えすべき点です。画面を見れば必ず言語が大きく遅れるという強い関係ではなく、「集団でならすと、わずかに低いほうへ傾く」という程度の関連です。
とはいえ、1万8千人という規模で一貫して同じ向きが出ていること、そして次に述べる日本の研究がより強い関連を示したことは、軽視できません。
その日本の大規模研究は、同じ方向をより強い数字で示しています。
宮城・岩手の親子7097組を追った出生コホート研究では、1歳時点のスクリーンタイムが長いほど、2歳・4歳での発達の遅れ(とくにコミュニケーションと問題解決の領域)のリスクが高くなっていました#2。
しかもその関連は、時間が長いほどリスクも上がる「用量反応」を示しています。1歳で1日4時間以上見ていた子は、1時間未満の子に比べ、2歳時点でコミュニケーションの発達の遅れが約4.8倍多く見られました(1〜2時間で約1.6倍、2〜4時間で約2倍)。
この関連は4歳時点でも残り、2〜4時間で約1.6倍、4時間以上で約2.7倍でした。
ちなみにこの研究では、1歳児のうち約半数(48.5%)が1日1時間未満で、4時間以上はわずか4.1%でした。長時間見ている子ども達は少数派で、その少数の子でリスクが際立って高い、という構図です。見れば見るほどという関係が、日本の子どもでも確認されたわけです。
脳画像は、何を示したのか
では「脳に悪い」という言い方はなぜされ始めたのでしょうか?
この元になっているのが、脳の画像研究です。
3〜5歳の子ども47人を調べた研究では、家庭でのスクリーン使用が多い(米国小児科学会の推奨を超える)子どもほど、言語や読み書きの土台となる脳の白質(神経線維の束)のつながりの質を示す指標が低く、同時に言語・読み書きのテストの点数も低い、という関連が見られました#4。
画面を見すぎると、脳の配線に差が出るかもしれないとよく言われていますが、この研究が多くの報道の元になっているということになります。
ただし、この結果は冷静に受け止める必要があります。この研究は47人という小規模で、しかもある一時点を切り取って撮っただけの断面研究です。だからスクリーンが脳の白質を変えたという因果までは証明できていません。
研究者自身も、さらなる検証が必要だと明言しています。脳画像という強い見た目のインパクトに引きずられず、「関連はあるが、因果の証明はこれから」という段階だと理解しておくのが正確でしょう。
「相関」と「因果」は違う
ここで、どうしても踏まえるべき科学の決まり事があります。「スクリーンタイムが長い子は発達が低い」という関連(いわゆる相関関係)があっても、それが「画面のせいで発達が下がった」とは限らない、という点です。
逆に、「もともと発達がゆっくりだったり、育てにくかったりする子だからこそ、親が画面に頼りがちになった」という可能性もあるからです。これは「逆の因果」と呼ばれ、この子どものスクリーンタイムでも長く議論されてきました。
この点を検証したのが、2441人の子どもを2歳・3歳・5歳と追いかけた研究です。この研究は「交差遅延パネルモデル」という(少し難しいですね)、どちらが先かという時間の前後関係を解析できる手法を使いました。
すると、24か月・36か月時点のスクリーンタイムの多さが、その後(36か月・60か月)の発達検査の低さを予測する、という向きの関連が確認された一方で、その逆(発達が低いことが後の画面時間を増やす)という向きは、同じようには確認されませんでした#3。
少なくともこの研究では、「発達が低いからスクリーンが増える」よりも「スクリーンが多いと後の発達に響く」という方向が支持されたのです。完全な証明ではありませんが、「ただの逆因果では説明できない」ことを示す、重要な手がかりです。
ここまでをまとめると、こうなります。
「画面が多いほど発達が低い」という関連は本物で、規模の大きい複数の研究で、しかも用量反応や時間の前後関係まで含めて示されている。
一方で、脳を直接壊すという決定的な因果までは証明されておらず、効果の大きさも中程度以下。
つまり根拠のない都市伝説でもなければ確定事実でもない、というのが現在のリアルです。ではなぜ関連が生まれるのか、その構造を知ると対策も変わってきます。
スクリーンタイムはなぜ悪影響が出るのか
では、なぜスクリーンタイムが発達に響くのでしょうか。ここが本記事のいちばん大事なところです。
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