冬になると子どもがだるそう。それ、甘えだと思ってませんか?

今回は久しぶりに子どもの医学的なテーマです。
今西洋介 2025.12.11
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皆様、こんにちは

12月の3本目です。

私の住んでいるロサンゼルスは一年中気候は暖かいですが、冬は朝と夜が冷えてくるので長袖が必要になっていきます。まさに「長袖ほしい」で、名探偵・津田の名言「長袖をください」状態です。ちなみに名探偵・津田は娘達が大好きな番組です。

©︎TBS

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今回は娘も困っている、そんな冬になって寒くなると起きる症状に関してです。

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長女の冬のだるさは甘え?それとも体のサイン?

我が家には三姉妹がいますが、14歳の長女が冬になると毎年困った事が起きます。

彼女はもともと季節の変化にとても敏感です

九月の終わりごろまでは、朝六時台には自分で起きてきて、服を着替えながらその日の予定を楽しそうに話してくれます。テスト前でも部活でも、多少の眠そうな顔はしながら、朝ごはんをしっかり食べて学校へ出かけていきます。

ところが、日が短くなってくる11月半ばを過ぎると、様子が少しずつ変わります。

まず、起こしに行っても返事だけして布団から出てこない日が増えます。

カーテンを開けても外はまだ薄暗く、部屋の照明だけではぱっと目が覚めないようです。15分、20分たってようやく起きてきても、朝食のあいだは言葉が少なく、我々の会話をぼんやり聞いているだけの日もあります。

夜の過ごし方も変化します。

以前は宿題や毎日の勉強が終わると、音楽を聴いたして寝室へ行っていましたが、冬が近づくと、夕方の時点でもうどこか疲れているように見えます。食後はソファで横になり、スマホをだらだら見ているうちにそのままうたた寝をしてしまう。起こしてベッドに誘うと、眠い、明日の朝起きられるかな、と愚痴がこぼれます。

親としては、勉強のプレッシャー、思春期特有の気分の波、単純な夜更かしなど、いろいろな理由が頭に浮かんできます。妻と相談して、寝る時間を決めてベッドインタイムを守らせていますが、1歳違いでテンションの高い次女とベッドに入ってからも楽しい女子トークが聞こえてきます。

それでも、毎年ほぼ同じ時期に、似たようなパターンで朝のつらさやだるさが強くなるのを見ると、これは性格だけでは説明できない、季節が体に与える影響も大きいのだろうと感じます。

同じような様子に心当たりのあるご家庭も多いのではないでしょうか。冬が近づくと、子どもが以前より不機嫌になりやすい、食べる量が増えた、外遊びに誘っても乗り気でない、といった相談を外来でもよく受けます。
アメリカや北欧諸国など、日照時間の変化が大きい地域の調査をまとめた総説では、成人だけでなく10代の一部でも、秋から冬にかけて「気分の落ち込み」「眠気」「甘いものが欲しくなる」といった症状が毎年くり返しやすいことが示されています(#1)

では、なぜ冬になると気分が落ち込みやすくなるのでしょうか。

日照時間の減少と体内リズムの乱れ

私たちの体には、朝になると目が覚め、日中は活動し、夜になると眠くなるという一日のリズムがあります。これは体内時計、「概日リズム」とも呼ばれ、太陽の光によって毎日微調整されています。

本来であれば、朝カーテンを開けたときに差し込む強い光が、脳にそろそろ活動を始める時間だと知らせてくれます。この光の刺激をきっかけに、眠気を誘うメラトニンの分泌が抑えられ、日中の覚醒モードにスイッチが入ります

話は変わりますが、このメラトニンは非常に重要で、私も時差ボケがある時はこのメラトニングミを愛用しています。元々は娘達の飛行機使用時に使っていたのですが、大人用もあり愛用しています。ちなみに米国ではAmazonで90粒が10ドルちょっとで買えるのでオススメです。私は結構効きます。

さて話を戻しましょう。

ところが冬になると、登校前の時間帯でも外がまだ暗かったり、どんより曇っていて十分な光が入らなかったりします。

すると体内時計をリセットする合図が弱くなり、脳はまだ夜の続きだと勘違いしてしまいます。その結果、メラトニンのリズムが後ろにずれ、朝になっても眠気が抜けない、体が温まらない、なかなかエンジンがかからないといった状態が続きます。

さらに、日照時間が短くなると、気分や意欲に関わるセロトニンの働きも低下しやすくなります。セロトニンは日中の光や体の動きによって活性化されるため、暗くて寒い時期は、どうしても元気が出にくい条件がそろってしまうのです。

冬の光の量が体内時計に与える影響についても、多くの研究があります。

たとえば、アメリカとヨーロッパの研究をまとめたメタアナリシスでは、季節性うつ病や非季節性うつ病の成人患者を対象に、明るい光(多くは2,500〜10,000ルクス)を朝など決まった時間に浴びる群と、偽治療(暗い光やプラセボ)を受ける群を比較したランダム化比較試験を統合しています。その結果、光療法を受けた群では、抑うつ症状が中等度の効果量で有意に改善し、とくに「朝の強い光」が体内時計を前にずらして日中の覚醒を助ける可能性が示されました(#2)

大人であれば、最近少しやる気が出ない、疲れやすいなどと自分で言語化できますが、子どもや思春期の年代では、自分の中で起きている変化をうまく説明できません。

そのため、結果として朝起きられない、親に反抗的な態度をとる、ゲームや動画にこもるといった行動だけが目立ち、怠けている、反抗期だと誤解されてしまうことがあるのです。

若年層にしぼって「体内リズム」と「抑うつ」の関係をまとめたシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、12〜30歳の若者を対象とした100件以上の研究を統合し、夜型傾向や入眠時刻の遅れ、睡眠の不規則さが強いほど、抑うつ症状が重くなりやすいことが報告されています(#3)

これらの研究では、活動量計や睡眠日誌を用いて実際の睡眠・覚醒リズムを客観的に測定し、そのデータと抑うつスコアを統計的に解析しています。冬になると朝の光が弱くなり、体内時計が後ろにずれやすい、という説明を裏づけるエビデンスです。

子どもでも起こりうる冬の憂鬱(winter blues)

季節が変わる時期にみられる気分の落ち込みやだるさは、「冬の憂鬱」、英語では winter blues と呼ばれることがあります。これは医学的な病名というより、多くの人に起こりうる軽度の季節性コンディションです。

米国では冬になると「Shake off the winter blues」といったように、冬の憂鬱に打ち勝て的なメッセージを目にします。下のFOXニュースも典型的な報道ですね。

また本屋でも、“books to shake off the winter blues”(冬のどんよりした気分を振り払うための書籍)というフレーズのコーナーで書籍がよく紹介されています。また 「春になったら散歩やガーデニングで winter blues を振り払おう」 といったコマーシャル的な文言も目にします。

逆を返せば、「冬になるとなんとなく気分が曇る」のは、誰もが経験する日常レベルの現象として言語化されているのです。

一方、winter blues状態の子どもの場合、次のようなサインとして表れやすくなります。

朝、布団から出るまでに時間がかかる

以前は楽しみにしていた習い事や外遊びに誘っても、面倒くさがって行きたがらない

家でゴロゴロしている時間が増え、体を動かす機会が減る

・パンや麺類、お菓子など炭水化物中心の食事を好むようになり、食べる量も増える

なんとなく不機嫌で、きょうだいや親に当たりやすくなる

重要なのは、学校にまったく行けないほどではないものの、親から見ると、前の季節と比べて明らかにペースが落ちていると感じられる点です。

学校に全く行けなくなるほどではなく、生活の大枠は保たれていることが多いのが Winter Blues の特徴です。生活リズムの調整や光の浴び方を整えることで改善しやすく、医学的な治療が必ずしも必要になるわけではありません。

winter bluesの影に隠れる重要な医学的問題とは

一方で、このような季節による気分の変化の陰に、より重いメンタルヘルスの問題が隠れている場合もあります。

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