育児中の小児科医は住む場所を何で選ぶか
皆様、こんにちは。
12月4本目ですね。今月はコンスタントに書けていますね。
育児中の小児科医が住む場所をどうやって決めるのか?について最近聞かれる事が多いので、今回まとめようと思いました。
確かに特に自分としては意識してなかったですが、面白いテーマだと思います。
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共働き子育てしやすい街ランキングを評価する
毎年恒例となった「共働き子育てしやすい街ランキング」が今年も発表されました。
この調査は、共働き子育てを巡る現状と課題を明らかにする目的で15年から毎年実施しているようで、今年で11回目だそうです。
首都圏、中京圏、関西圏の主要市区と全国の政令指定都市、道府県庁所在地、人口20万人以上の都市の計180自治体を対象に25年9~10月に実施しました。
市区役所の正規職員における管理職の女性比率や、男性職員の育児休業取得率、女性議員の割合など、自治体のダイバーシティ推進も含めて計43の評価項目を作成して採点し、100点満点で総合ランキングを作成しました。
日本には自治体が1790個あるようなので、回答は159自治体から得たものですから10%弱しかないというのは結果の解釈が必要そうです。
結果は以下の通りになりました。
特にトップ5の自治体はニュースでも度々話題になる程なので、皆さんも納得かもしれませんね。では小児科医の視点から1つずつ評価してみたいと思います。
1位. 品川区
1位に品川区が来たのは個人的には納得です。これは自治体として充実した子育て支援策を積極的に展開してきたことがあるからです。
まず全国でまだ10%台しか利用率のない産後ケアの支援が手厚いです。出産後の母親をサポートする専門家「産後ドゥーラ」の利用料を、第1子で最大60時間、第2子以降では最大180時間(上の子が3歳未満の場合)まで区が補助しています。
また0歳児のいる家庭を対象に、月1回約3,000円のオムツなど育児用品を届ける「見守りおむつ定期便」を実施し、育児用品の支給を通じて家庭の見守りも行っています。
学校支援にも熱いです。小学校の一部で朝7時30分から校舎を開放し、朝食をとっていない児童には無料でパンを配布したり、放課後の学童保育「すまいるスクール」は区内37か所で展開され、17時までの利用料が無料です。
また物価高対策として無償化のオンパレードです。2025年夏には小学1年生~高校3年生相当の子ども一人につき2kgのお米を所得制限なく児童センターで無償配布、2024年度から小中学校の学用品を所得制限なしで無償化し、2025年度は中学校の修学旅行費を無償化、2026年度には中学校の制服も無償配布と今後も続きます。
一方で、効果のないオーガニック製品を区立小中学校の給食の野菜に取り入れる事も検討されており、これに関してはちょっと残念な気もします。
2位. 福生市
東京都の福生市が個人的に素晴らしいなと思っているのは、市内全ての保育園で医療的ケアが必要な子どもを受け入れ可能な体制を整備している事です。保育園の医療的ケア児は手もかかりますから大変なので、全保育園で導入するのはなかなかできる事ではありません。自分も他の市で多くの保育園に断られてきました。多くの理由は「前例がない」という事です。
その他、保育所・幼稚園の3~5歳児クラスで給食費を無償化したり、学童保育は最長で19時以降まで預かり可能、市内3カ所の学童では夕食まで提供していて、長時間労働で共働きの親御さんには嬉しいですね。
小児医療体制で見れば、公立福生病院を中心とした公的医療機関と複数の民間クリニックによって構成されていて、基本的な小児急性期医療から専門的な対応まで、地域の医療需要に応じた診療体制が整備されており、市内で完結するという恵まれた状況にあります。また、福生市を含む西多摩医療圏では、小児救急への対応体制が整備されています。また、3次救急対応が必要な場合は都立小児総合医療センターなど近隣の高度医療機関への円滑な紹介体制が構築されており、バックトランスファーやトライアングルトランスファーも行われていて連携がスムーズです。
3位. 松戸市
千葉県の松戸市も人気がありますね。市内28カ所の地域子育て支援拠点に市認定の子育てコーディネーターを常駐させ、子育て相談対応や乳幼児の一時預かりサービスを提供しています。また、保育の受け皿に余裕がありますね。医療的ケア児受け入れのための人件費補助や施設改修補助を行うほか、学童保育には希望者全員が入れる状況を確保されています。
2025年度には多胎児家庭支援として、タクシー利用料の補助(1回上限2,000円、年30回まで)や双子用ベビーカー購入費の補助(費用の1/2、上限3万円)など新たな施策も導入していく予定です。
松戸市は個人的に松戸市民病院の小児科が壁の厚さで知られていて、小児救急も強くて、住んでいる子育て層は子どもに何かあっても安心ですよね。
4位. 宇都宮市
宇都宮市は、保育の受け皿の確保だけでなく、登園・お迎えという共働き家庭の最大のボトルネックに正面から手を入れているのが特徴ですね。
JR宇都宮駅近くの送迎保育ステーションから保育士が添乗するバスで保育所へ送迎する仕組みを設け、保護者の送迎負担を軽くしています。
しかも驚くことに病児保育でも、保護者に代わって送迎する仕組みがあるというのですから驚きます。病児保育に送迎支援があるのは、子どもが必要な休養を取りやすくしますし、働く親御さんも楽になりますよね。何せ、病児保育を展開している施設が家の近くに必ずしもあるわけではないので、地味に助かります。
5位. 神戸市
神戸市は明確に「病児」「放課後」「長期休暇」の3点に、しっかり予算付けしているのが印象的です。2025年に病児保育施設を新規整備し、補助も拡充する方針が示されています。また学童保育では、学校の共用利用や専用スペース整備によって実施場所を確保、夏休みだけの受け入れ施設数を20箇所から50箇所に拡大するなど、需要の波が大きい時期を狙った手当ても進めています。さらには夏休みに子どもたちへ昼食提供の拡大も狙っていると言いますから驚きです。
神戸市は病児保育の拡充もいいですが、「昼食提供」や居場所づくりに積極的なのがいいですね。長期休暇中の栄養・生活リズム・安全に直結することが見えてわかります。
どれもこれも素晴らしい取り組みですね。
上位5自治体でも異なる「もの」
小児科医は普段子どもを診ているプロ集団です。子どもの医療の事は日本一精通している職種といって良いでしょう。
そんな我々でも自分の子どもを持つとよく話題になるのが「どこに住むか」です。
子どもの事を知っているからこそ、当然ですが我が子にも良い恩恵を受けさせたい。そう願うのは当たり前ではないでしょうか。
では住む地域をどうやって決めているか。それはあるポイントがあります。
先ほどの上位5自治体を見てもランキングの中でもその中での差は大きいです。もちろん職場から近いところというのはありますが、我々の業界で話題になるのは一つ。
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