「母親は育児中に脳が子どもとシンクロする」説は本当か?
2月3本目です。
今回も頂いた相談から検証記事を書いていきます。
育児中に子どもとの遊びに集中しない父親に苛立ちを感じていらっしゃるお母さんから来た質問でした。今回はこの説を検証していきたいと思います。
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先日このニュースレターにこんな質問が寄せられました。
いつも有用な記事を有難うございます。毎回楽しみにしています。今回は育児に集中しない旦那のことです。うちの旦那は3歳の息子と遊んでくれるのですが、遊んでいる最中にすぐスマホを見たり、公園に行ってもすぐに違う事をしています。スマホでニュースを見たり、Xを見たり色々としています(笑)育児に全然集中してくれないのです。私は息子と遊んでいる時はなるべく息子の言う事を聞いたり、一緒に遊ぶようにしています。これはどこの家庭でもそうなのでしょうか?SCUで母親は育児中子どもと脳が同じ動きをするという記事を読んだことがありますが、本当でしょうか?忙しいところ申し訳ありませんが、ご回答よろしくお願いします。
ご質問、有難うございます。
これは私も若干耳が痛い話ではあります。
スマホでメールチェックをしていたら、妻に同じようなことを言われた記憶があります。今でこそ育児を始めて13年経過したので妻と育児への考え方はほぼ同じですが、長女の小さい頃は育児への考え方で揉める事は多かったですが、揉める前に話し合うことによって揉める事はかなり減りました。多分お互い歳を取って争う元気がなくなったのが1番大きいですが...
母親の育児と父親の育児で脳の働きがどう違うのでしょうか?「母親は育児中子どもと脳が同じ動きをする」説は本当かを検証したいと思います。
説の元となった研究
おそらく最近ニュースとなった研究はこちらかもしれません。
それはNeuroImageという科学雑誌より昨年中国から発表された研究で、母親と父親が子どもとの共有体験中に異なる神経同期を示す事を示したものです(#1)
それには、子どもの脳の発達や社会性スキル向上には「親子の共有体験」が重要である事は以前から言われていた事です。
社会性スキルとは他者との良好な関係を築き、円滑にコミュニケーションを取るための能力の事を指します。これには人間関係を築いていく力、友達や大人に感情を適切に表現する力、そして集団で協力する力を指します。
育児での共有体験とは、親と子どもの間で本の読み聞かせ、一緒にテレビや動画を観る、ごっこ遊び、日常の会話や食事中の対話などを含みます。親子はこうした体験を通じて共感力やコミュニケーション能力が育まれると考えられているのです(#2)
またそれだけでなく、親と子どもの脳の活動が同じような動きをする時、より深い絆が生まれることが示唆されています。親子の絆の強化はもちろんですが、子どもの方にも言語や認知能力の発達などのメリットが言われていました(#3)
このように以前の研究では、親子の共有体験を通じて脳の活動がシンクロする事のメリットは言われていたのですが、ほとんどの研究が母親のみを対象としていて、父親の研究はほとんどありませんでした。
そこで今回の研究では、親子の脳の同期性がどのように異なるのかを調べるため、fNIRS(機能的近赤外分光法) を用いたハイパースキャニング(同時脳活動測定) を行いました。母親33名と父親29名、その子ども(3~4歳) を対象にしました。
親子が一緒にアニメーション動画を観たり、親子一緒に10分間自由におもちゃで遊んだりして、その間でfNIRSキャップを装着し、脳の酸素化ヘモグロビン(HbO)の変化をリアルタイムに測定しました。これをすることで、血流の変化がわかります。

この時、一緒にアニメーション動画を観る時はお互いに声がけは禁止しあくまで「受動的な行動」とし、逆に親子一緒に自由におもちゃで遊ぶ行動は「積極的な行動」と位置付けました。
研究の結果は?
この研究の結果、以下のことがわかりました。
提携媒体
コラボ実績
提携媒体・コラボ実績



