テレビをつけたまま食べる子は発達が遅れるは本当?
皆さん、こんにちは。
11月になりました。気づけば、今年も残り2ヶ月ですね。
日本はすっかり秋の季節ですね。自分は四季の中で春の次に好きな季節です。過ごしやすくなり、食欲の秋で美味しいものが増えていますね。
米国はちょうど昨日、中間選挙が行われまして、結果として民主党の圧勝でした。我々が住んでいるカリフォルニア州は元々民主党の牙城のような場所で、移民に対してもとてもフレンドリーなのですが、それでも周囲の盛り上がりは凄じく、米国の選挙の激しさを改めて実感しました。
では今月も頑張っていきましょう。
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最近、我が家で困っていることがあります。
それは、6歳の三女がご飯を食べる時にテレビをつけて欲しいと願ってくることです。
自分は夕方まで仕事をして、長女や次女も別々の習い事があって、平日の夜はなかなか家族5人で並んで食事を取ることができません。
しかも食欲旺盛な三女はとにかく食べることが大好き。夕方に帰ってきて、とにかく何か食べたいと言うので、お菓子を食べるくらいなら早めの晩御飯にしようとのことで、夕方5時くらいに夕食を食べています。
しかし夕方5時は送迎やら仕事やらでまだまだ忙しい時間帯です。
そこで彼女は、テレビを見ながら食べたいと言ってくるのです。
確かに、この問題は発達外来でよくある相談でした。
外来で「食事中、テレビや動画はつけていますか」と聞くと、多くの方が少し申し訳なさそうに「つけています」と答えます。「食事中のテレビは良くない」とは、みんな聞いたことがあります。では、具体的に子どもの何がどのくらい変わるのか。体重なのか、食べる量なのか、言葉なのか。そしてつけないと食べない家庭は、何をすればいいのか。
2026年6月、米国小児科学会の医学誌に、こんな調査が載りました。4歳から10歳の子どもがいる米国の約350世帯に、直近の家族の食事を思い出してもらったところ、親の77.6%、子どもの68.7%が、その食事中に何らかのメディアを使っていました#1。
つまり、使っているのは子どもだけではなく、親のほうが多かったのです。食卓のスクリーンタイムは「うちだけの問題」ではなく、現代の家庭での当たり前のことになっているのです。
この記事では、食事中のテレビや動画が子どもの食べ方と発達にどんな影響を及ぼしているかを研究で確かめ、禁止ではない代替案を実際に試せる形であげて見たいと思います。
第1章 「ながら食べ」で、子どもの体に起きること
テレビは、食べる手を止めない
人は同じ味を食べ続けると、だんだん飽きて手が止まります。これはいわゆる慣れと呼ばれる仕組みで、食べ過ぎを防ぐブレーキの一つです。米国の研究チームは、このブレーキがテレビで外れるかどうかを、子どもで実験しました#2。
一つ目の実験では、子どもたちにボタンを押してチーズバーガーを手に入れる課題を繰り返させます。7回目までにどの子も飽きて、ボタンを押す回数が減ります。そこで8回目から、ある群には新しい食べ物であるフライドポテトを、別の群にはテレビを見せました。(それにしてもアメリカらしい食べ物の選択だなあ)
テレビを見た群は、新しい食べ物の群と同じように再びボタンを押し始め、食べる量も対照群より増えました。
二つ目の実験では、好きなおやつを1,000キロカロリー分置いて、テレビ番組を続けて流す群、テレビなしの群、同じ場面を繰り返し流す群に分けました。番組を続けて見た群だけが、食べる時間も摂取カロリーも増えました。画面が光っていること自体ではなく、次に何が起きるかに注意が向くことが、飽きのブレーキを外していたのです。
画面を見ている間、子どもは自分が何をどれだけ食べたかを覚えていません。もうおなかいっぱいという体の声が、テレビを見ることでかき消されてしまうのです。
野菜が減り、甘い飲み物が増える
量だけでなく、中身も変わります。英国の研究者らが、1歳から18歳の子ども61,674人を含む13本の研究をまとめました#3。食事全体の習慣を調べた6本は、すべてで「テレビを見ながら食べる子ほど、ピザ、揚げ物、菓子、スナックをよく食べる」という結果でした。野菜と果物を調べた8本のうち7本で、ながら食べの子ほど摂取が少なく、甘い飲み物を調べた5本のうち4本で、ながら食べの子ほど多く飲んでいました。
このレビューには、気になる箇所があります。
それは「家族そろって食べていても、テレビがついていると、食事の質への悪影響は打ち消されなかった」というものです。家族そろって取る食事のメリットは、同じ食卓にテレビが置かれると一部が消えるということです。一回あたりの差は小さいと著者らも書いています。それでも、1日3回、年に1,000回以上積み重なる場面ではその影響の大きさは計り知れません。
では子どもの体重はどうでしょうか。
18歳未満の子ども84,825人を含む20本の観察研究を集めたメタ解析では、テレビを見ながら食べる子は過体重のオッズが1.28倍でした#4。男女で差はなく、夕食をテレビの前で食べる子でも同じ傾向でした。1.28倍は、驚くほど大きな差ではありません。しかも「テレビの前で食べた子が太る」という単純な因果ではなく、そういう家庭に他の要因も重なりやすいことを含んだ数字なので解釈には注意が必要です。
「少なく食べる」ことも習慣が決める
ややこしいことに、逆の結果もあります。
米国の大学付属保育施設で、3歳から5歳の24人に22分間のアニメを見ながら昼食とおやつを食べてもらった実験では、全体としてはテレビなしのときより食べる量が減りました#5。画面に見入って、食べるのを忘れたのです。
ただ、この研究で一番大事なのは、その先です。家庭で普段からテレビをよく見ていて、テレビの前で食事をする回数が多い子は、逆にテレビの前で「多く」食べていました。
恐ろしいことに、画面を見ながら食べることを繰り返すうちに、画面がついている状態と食べる事が無意識に結びつき、画面があると食べる子になっていたのです。1回の実験で量が増えるか減るかより、毎日の習慣が子どもの食べ方そのものを作り変えるという話です。
子どもの「もういらない」を見逃す
ここまでは子ども側の話でした。でも、食卓にはまだ人間がいます。
それは親です。
米国の研究チームは、生後19か月前後の子どもと母親77組の夕食をビデオに撮り、子どもが出す「満腹のサイン」と、それに母親がどう反応するかを採点しました#6。満腹のサインとは、食べるペースが落ちる、顔をそむける、スプーンを押しのける、といった合図です。食事中にテレビやスマホを使っていた母親は12%でしたが、その母親たちの「子の満腹サインへの反応の良さ」は5点満点で2.0点、使っていなかった母親は3.4点でした。しかも、画面を使っていた母親の子は、初期の小さなサインをむしろ強く出していました。子どもは「もういらない」と言っているのに、親は画面を見ていて気づかず、もう一口、もう一口と続きます。
食べさせ過ぎは、親がテレビを見ているうちに始まってしまうのです。テレビは子どものブレーキを外すだけでなく、親のセンサーも鈍らせます。両方が同時に起きるのが、テレビをつけている食卓で起きる特徴なのです。
日本の7万人のデータで示す歯との関係
日本のデータも一つ紹介します。沖縄県で、1歳半健診と3歳児健診の記録をつないだ71,438人の研究が、2026年に出ました#7。1歳半の時点では画面を日常的に見ていなかったのに、3歳までに1日1時間を超えるようになった子は、ずっと少なかった子に比べて、3歳での虫歯のオッズが1.27倍でした。重い虫歯では1.55倍です。一方、体重との関係は、1歳半時点の体格を考慮すると消えました。
著者は、健診で画面時間の増え方を見て、食事と歯みがきは画面なしでと助言することを提案しています。虫歯と画面がどうつながるかは、この研究だけでは分かりません。ただ、食事中に動画がついていれば食事がだらだら長くなり、口の中に食べ物がある時間が延びる、という流れは、外来で見ていてよく分かります。ちなみに11月8日は「いい歯の日」です。
食事中の画面は、子どもから飽きのブレーキを外し、野菜を減らして甘い飲み物を増やし、親の満腹サインを読み取る能力を鈍らせます。ただ、差は一回では小さく、体重への影響も控えめです。自分が本当に気にしているのは、次の章で書く言葉の話です。
第2章 言葉は、食卓で育つ
「画面の時間」より、「食事中についているか」
フランスには、2011年に生まれた子どもを追いかけている「ELFE」という国の出生コホートがあります。研究チームは、このうち13,763人について、2歳、3歳半、5歳半の時点で、画面の利用時間と「家族の食事中にテレビがついているか」を親に聞き、語彙や発達の指標を測りました#8。
結果は、予想と少し違いました。
2歳時点の語彙と、3歳半時点の発達指標を下げていたのは、スクリーンを見ている時間ではなく、「家族の食事中にテレビがついているかどうか」でした。食事中にテレビがついている家庭の子は、2歳の語彙の得点が平均で1.67点低く、3歳半の発達指標も0.82点低くなっていました。世帯の収入や親の学歴、出生時の状況、読み聞かせなどの生活習慣を調整したうえでの数字です。著者らは「画面の利用時間だけでなく、どんな文脈で使われているかが、子どもの認知発達には重要である」と結論づけています。
点数の差は小さい、と感じた方もいると思います。自分もそう思います。
これは「食事中のテレビで言葉が遅れる」と断言できる数字ではありません。ただ、同じ研究でスクリーンの総時間は2歳の語彙と関係していなかった、という対比が重要です。1日に何分見ているかより、食卓にテレビがついているかどうかのほうが言葉と関係していた。
なぜ食卓なのか。その答えが、次の節からです。
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第2章 親がスマホを触っている5秒間に、親子の会話がどう変わるかを録画で測った研究。食卓が「言葉の練習場」である理由。「動画がないと食べない」子で起きていること。親のほうが使っているというデータ
第3章 「禁止」ではない代替案。動画を食後に移す約束の作り方、食事を10分長くする研究、会話の型、見るなら一緒に短く、親のスマホの置き場所。動画が唯一の食べる手段になっている子の例外。園と祖父母への伝え方
第4章 ふらいと先生はこう思う
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