インフルエンザワクチンのフルミストは脳に行く?添加物は発達障害を起こす?親が確かめる5つのこと
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まだまだインフルエンザの流行は収束していませんね。
北海道ではインフルエンザ感染拡大で、バスの運転手が不足しているそうです。バスの中などは密室ですから、すぐうつりそうですよね。
そういえば、先週、読者の方からこんなコメントが届きました。是非、ニュースレターで取り上げてほしいとの事で、取り上げていきます。
「前にインフルエンザワクチンのメルマガがあり、参考にさせていただき、5歳の娘にフルミストを接種しました。最近X上、アメリカのトランプ大統領も予防接種は意味ないとか、フルミストは鼻から入れて脳に行きやすくなって危険だとか、定期予防接種も添加物まみれで発達障害の原因にもなっているとアメリカの学会でも言われ始めた等、色んな情報が出回っていて、何を信じていいのか、医療の知識のない一般人は何をどのように信じて判断したらいいのか悩んでしまいます。子供を守りたいから予防接種をしているのに、それが害になっていると言う人がいるとついつい気になってしまい、自分の判断は大丈夫なのか不安になってしまう今日この頃です。先生はネット上の反ワクチン派の方の意見をどのように見ていらっしゃるのでしょうか」
この文章を読めばわかりますが、この方は反ワクチンではありません。娘さんにワクチンを打ち、それでも流れてくる情報に揺れている、ごく普通の親です。
そしてこの方は違いますが、自分の経験では反ワクチンと呼ばれる人たちの中にも、本当は打つかどうか迷っていて、たまたま目にした情報に引っ張られているだけの人が、かなり含まれています。
なので答え方は、論破ではありません。情報を分かる形で、きちんと渡すことだと思っています。
この記事では、コメントに出てきた三つの噂を研究で検証し、なぜ今その情報が増えているのかを米国と日本の経緯から整理し、最後にそういった情報を、親が何を確かめればいいか」を手順にします。
第1章 三つの噂を検証する
噂1: フルミストは、鼻から脳に行くのか?
フルミストは、鼻に噴霧する生ワクチンです。
弱毒化したインフルエンザウイルスが鼻の粘膜で少しだけ増え、免疫をつくります。米国では2003年から、日本では2024年の秋から2歳以上18歳以下の子どもに使われています。注射より痛みがなく、1回で済むことから、昨シーズンから選ぶ家庭が急に増えました。非常に人気のため、クリニックでは品薄のところもあると聞いています。
これだけ情報が増えたのは、使う人が増えたからでもあります。一方で「鼻から入れると脳に近いから危ない」という主張は、この生きたウイルスを鼻に入れるという点から出てきたと思われます。
ただ、このワクチンのウイルスは、低い温度でしか増えないように作られています。鼻の奥は体の中でも温度が低い場所で、そこでは増えますが、肺や脳のある体の深部の温度では増えられません。だから鼻の奥で止まることが、このワクチン設計そのものに組み込まれています。
では実際に、打った子どもに脳や神経の病気が増えたかどうか見てみましょう。
米国の6つの医療機関のデータベースで、2003年から2013年に鼻のワクチンを受けた2〜17歳の子ども39万6,173人、59万18回分を調べた研究があります#1。
アレルギー、自己免疫、神経、呼吸器、感染症など18群の有害事象を、同じ子どもの別の期間と比べました。神経の病気を含む13群で危険の増加はなく、残った2つはアナフィラキシー(100万回に1.7回)と失神(100万回に8.5回)で、脳の病気ではありませんでした。4価になった後のワクチンでも、カリフォルニアで6万2,040人を追い、ベル麻痺、脳炎、ギラン・バレー症候群、けいれん、ナルコレプシーをそれぞれ調べましたが、受けなかった人や注射のワクチンを受けた人と比べて増えていませんでした#1
ここで、強調しておきたい重要な点があります。
「鼻のワクチンで神経の病気が起きた」ことは、過去に本当にありました。2000年にスイスだけで使われた、別の経鼻インフルエンザワクチンです。導入後に顔面神経麻痺(ベル麻痺)の報告が相次ぎ、調査では受けた人の危険が受けていない人の19〜84倍、1万人あたり13人の超過と推定され、ワクチンは1シーズンで使われなくなりました#3。
これは不活化ワクチンに特殊な成分を加えたもので、フルミストとは全くの別の製品です。
この苦い経験があるからこそ、その後の経鼻ワクチンは神経の病気を最初から監視項目に入れて追われてきました。危険なワクチンは本当にあり、見つけられ、過去に止められたのは事実です。
そしてフルミストはこれと全く別物で、これが脳に行くわけではないと言うことははっきり言えるでしょう。
噂2: 添加物は発達障害の原因?
「添加物まみれで発達障害の原因になる」という主張は、20年以上前から形を変えて繰り返されています。
中身は主に二つ、水銀を含む保存剤チメロサールと、免疫を高めるためのアルミニウムです。
チメロサールについては、デンマークで1990〜1996年に生まれた46万7,450人を追った研究があります#4。チメロサールを含む同じワクチンを受けた子と、含まない製剤を受けた子で、自閉症の発生率は変わらず(率比0.85)、量が増えても危険は増えませんでした。
その後の研究を集めたメタ解析では、5つのコホート研究の125万6,407人で、ワクチン全体でも、チメロサールでも、水銀でも、MMRでも、自閉症との関連はありませんでした#5。なお、日本の子どもの定期接種ワクチンの多くはすでにチメロサールを含んでいません。
アルミニウムについては、2025年7月に最も大きな研究が出ました#6。
デンマークで1997〜2018年に生まれた122万4,176人について、2歳までにワクチンから受けたアルミニウムの総量と、その後の50の慢性疾患の関係を調べたものです。自己免疫疾患、ぜんそくやアトピーなどのアレルギー、自閉症やADHDなどの神経発達の病気のどれも、アルミニウムの量が増えるほど増えるという関係はなく、神経発達の病気の群では量が1ミリグラム増えるごとのハザード比が0.93でした。
著者らは、まれな病気で小さな影響を完全には除外できないと断っていますが、中程度以上の危険の増加とは一致しない結果です。
MMRワクチンについても、同じデンマークで65万7,461人を追った研究があり、受けた子の自閉症のハザード比は0.93で、きょうだいに自閉症がいる子や、危険因子を持つ子に限っても増えていませんでした#7。「体質的に弱い子だけに起きる」という主張は、この研究が直接検証して、否定しているのです。
噂3:「予防接種は意味がない」?
この主張は、ちょっとよくわからないのですが、明確な根拠が見つかりません。代わりに、逆の証拠があります。
世界保健機関の拡大予防接種計画が始まった1974年から50年間の効果を推定した2024年の研究では、14の病原体に対するワクチンで1億5,400万人の死亡が防がれ、その1億4,600万人は5歳未満でした#8。
この50年の乳児死亡率の低下の40%はワクチンによるものと推定されています。インフルエンザワクチンが子どもの入院や死亡をどれだけ減らすかは、既刊の2本で書いたとおりです。米国の研究では、接種した子どもの集中治療室への入院が7〜8割減り、小児の死亡が6割以上減っていました。当然ながら「意味がない」と「効果は100%ではない」は、まったく意味が違います。
これはよく誤解されますが、ワクチンはあくまで病気にかかる確率と重くなる確率を下げる道具であって、かからないことを保証する手段ではありません。その違いを飛ばした言い方が、打ったのにかかったという体験談と結びついて広がります。
ここまでの3つの説に、科学はかなり明確に答えています。
では、なぜ今こうした情報が増えているのでしょうか。
「アメリカの学会で言われ始めた」という部分は、何を指しているのか。第2章では、2025年から2026年にかけて米国で起きたことと、日本が10年前に通った道を整理します。
第2章 なぜ今、その情報が増えたのか
米国で起きていること。学会ではなく政権の決定
これ以降は御登録いただければ、読むことができます。
第2章 なぜ今、その情報が増えたのか。2025〜2026年に米国の予防接種政策で何が起き、誰が反対し、裁判所が何を止めたか。日本のHPVワクチンで起きたこととその代償。「政府への不信」と「ワクチンへの不信」を分ける研究
第3章 次に「危ない」という投稿を見た夜に、親が確かめる5つのこと。副反応の報告数の読み方、フルミストを選んだ判断への答え、かかりつけ医への聞き方、迷っている人と話すときの作法
第4章 自分は反ワクチンの人の意見をどう見ているか
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