我が子が夜寝ないのは、親のせいではない〜最新の睡眠科学が突き止めた「寝ない子」の正体
皆さん、こんにちは。
10月4本目ですね。
米国ではハロウィーン一色になっています。この時期になると一般家庭でも飾り付けをしていて、夜歩いても楽しいものです。
我が家はそんな飾り付けをする時間と余裕がありませんが。。
さて今回も進めていきましょう。
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この夏は書類の手続きなどで日本に長期滞在しましたが、あの業界大手の森・濱田松本事務所で、社育児勉強会が開催され、講師に呼んで頂きました。
法律関係の方々に、「どのようにすれば育児リテラシーの話をすればわかりやすいか」について考えてスライドを作って、何とか納得できるお話をお届けできました。

皆さん、これらの問題に対して真剣に考えて頂いて、事後の質問もたくさん頂きとても嬉しかったです。そんな中で、同じ内容の質問が2つ届きました。
少し内容を変えていますが、だいたい下のような感じです。。
1つは、年少を過ぎてもたっぷり昼寝のある保育園に通う子の親からです。
「21時半には布団に入れているのに、昼寝をしてきたらしい日は23時半まで寝ません。園に昼寝を短くしてほしいと頼みましたが、対応が難しいと言われました。昼寝をしていれば、夜の寝つきが遅くても問題ないのでしょうか」
もう一つは3歳の子の親からです。
「保育園でしっかり昼寝をしているせいか、夜は元気で、寝るのはいつも22時ごろ。朝は6時半に起きます。睡眠は足りているのでしょうか」
外来でも、この相談は毎週のように受けますし、睡眠の問題で悩んでいる親御さんは本当に多いです。そして、たいてい親は自分を責めています。しかし自分は、この問題の原因の多くが、家ではなく園の午後と子どもの体内時計にあると考えています。
昼寝をすると、夜の寝つきは本当に遅くなるのか?「寝ない子」の体の中では何が起きているのか?昼と夜の合計が足りていれば問題ないのか?園に昼寝を短くしてもらえないとき、親の手に残っている対策は何か?
この記事では、2026年に発表された日本の保育園の研究、幼児の体内時計を唾液で測った2025年の研究、夕方の光で体内時計が動くことを示した無作為化試験、そして東京の公立保育園1,746家庭の調査から、この四つの問いに答えていきます。
第1章 「昼寝したから夜寝ない」は、本当か
日本の保育園児は、幼稚園児より遅く寝る
まず、いつものごとくデータのチェックからです。
日本のデータから始めます。
福島大学の研究者らは、幼稚園か保育園に通う3〜6歳の子ども441人の睡眠を、親への質問票で調べました#3。このグループは以前から、日本の保育園の一律の昼寝が園児の就寝を遅らせることを報告してきましたが、この調査でも同じ結果が再現されました。さらに睡眠と食事の時刻で家庭を5つの型に分けると、寝る時刻と食事の時刻が遅く不規則な子ほど、体と心の不調が多いという関係が出ました。平日は早寝早起きでも週末だけ遅く起きる型の子にも不調は多く、著者らは規則正しい睡眠と食事の時刻の重要性を結論にしています。
もっと大きな規模の数字もあります。弘前市の5歳児健診を受けた2,055人を対象にした2024年の研究では、18%の子に睡眠の問題がありました#2。就寝が22時を過ぎる子では30.7%、寝つくまでに30分以上かかる子では35.3%、画面を見る時間が1日2時間以上の子では21.1%と、どれも全体より高い割合でした。5歳児の5人に1人が、すでに睡眠の問題を抱えています。
大阪大学のグループが2023年に発表した日本の幼児2,124人のオンライン調査でも、夜の睡眠時間の平均は10時間に届いていませんでした#14。研究者たちは「22時前に寝る」「夜に9時間以上眠る」「夜中に起きるのは1回未満」という最低限の基準を立て、満たす子と満たさない子の生活を比べました。
満たす子は日中の行動も良好で、その生活を分けていた要因は、昼寝を早い時刻に終えること、午前中に外で遊ぶこと、画面を見る時間を抑えること、寝る前に興奮することを避けること、毎日の日課を一定にすることでした。昼寝の「終わる時刻」が、ここでも夜を左右する要因に挙がっています。
26本の研究の答え。2歳を過ぎると、昼寝は夜を削る
では、昼寝が夜の睡眠を遅らせるという現象は、日本に限らず確かめられているのでしょうか。
オーストラリアのクイーンズランド工科大学のグループは、0〜5歳の昼寝と発達や健康の関係を調べた研究26本を、系統的レビューとしてまとめました#1。認知、行動、肥満、唾液中のストレスホルモンなど、調べられた項目はさまざまで、結果は一貫していません。
ただ一つ、どの研究でも方向がそろっていたのが夜の睡眠でした。
昼寝をする子は、夜の寝つきが遅く、夜の睡眠が短く、質も低い。この関連は2歳を過ぎると特にはっきりしていました。研究はすべて観察研究で証拠の確かさは低い、と著者らは断っていますが、26本の中で最も安定して出た結果がこれでした。
同じグループは、保育園の「決められた昼寝の時間」に注目した研究も行いました#2。
4〜6歳の子ども168人を認可保育園で直接観察し、「横になる以外のことが許されない時間」を測りました。この時間が60分を超える園の子どもは、60分以下の園の子どもより夜の睡眠が有意に短く、その差は12か月後、小学校に入ってからも残っていました。しかも統計的に見ると、昼寝の時間割そのものではなく、その時間に実際に眠ってしまうことが夜の睡眠を削っていました。
2026年、日本の保育園で昼寝をやめたら何が起きたか
ここまでは観察研究で、「昼寝をする子は夜が遅い」という関連しか示せません。
本当に知りたいのは、昼寝をやめたら夜が変わるのか、です。2026年9月、帝京大学のグループが発表した研究が、日本の保育園でまさにそれを測りました#4。この園では、4歳児クラスに上がるタイミングで集団の昼寝が終わります。研究者たちは4歳児19人の手首に活動量計をつけ、昼寝が終わる前の7日間と、終わって約3週間後の7日間を比べました。
すると昼寝が終わると、布団に入る時刻が早まり、寝つくまでの時間が短くなり、睡眠効率が上がりました。夜の睡眠は31.6分増え、昼寝は68.8分減り、合計では37.2分の減少でした。つまり昼寝で眠っていた時間のおよそ半分が夜に移り、残り半分は、体がもう必要としていなかった睡眠だった、と読めます。
そして昼寝の減り方が大きい子ほど夜の睡眠が増え、夜の睡眠が増えた子ほど、注意力の課題での見落としが減っていました。研究者たちの結論は「一律の集団午睡の見直しと、より柔軟な保育の睡眠習慣の採用を支持する」でした。
もちろん19人の前後比較ですから、これだけで結論は出せません。それでも、日本の園で日本の4歳児の手首で測った数字として、勉強会の質問にこれほど直接答える研究はありませんでした。
「寝ない子」の体の中で起きていること
昼寝をすると夜に眠れなくなるのは、気のせいではなく、体の仕組みです。
眠気は2つの力で決まります。1つは起きている時間とともにたまる「睡眠圧」で、昼寝はこれを放出してしまいます。もう1つは体内時計で、夜になると眠りのホルモンであるメラトニンが出始め、眠りの扉が開きます。
コロラド大学の研究者たちは、平均2歳10か月の幼児20人について、昼寝をする子としない子で、このメラトニンが出始める時刻を唾液で測りました#6。昼寝をする子は、メラトニンが出始める時刻が38分遅く、実際に眠りにつく時刻が59分遅く、夜の睡眠は69分短いという結果でした。昼寝をした日数が多い子ほど、メラトニンの出る時刻が遅れていました。
同じグループは2025年、3〜6歳の49人でメラトニンが出始める時刻と就寝の関係を調べ、親が選んでいる就寝時刻の正体を明らかにしました#7。メラトニンが出始めるのは平均すると布団に入る35分前でしたが、18.4%の子では、親が決めた就寝時刻のほうがメラトニンの出始めより早かったのです。つまり5人に1人は、眠りの扉がまだ開いていないうちに布団に入れられていました。そしてメラトニンの出始めが1時間遅い子は、布団に入る時刻が28分、実際に寝つく時刻が33分遅くなっていました。
ここに、まさに寝ない子の正体があります。体内時計が遅れている子は、何時に布団に入れても、眠気の扉が開くまでは眠れません。遅れた時計は、昼寝で睡眠圧が抜けることと、夜遅くまで明るい部屋で過ごすことで、さらに遅れます。翌日はまた園で昼寝が必要になり、輪は閉じます。寝かしつけの腕ではなく、時計の針がずれているのです。
では、夜が多少遅くなっても、昼寝と夜を足した合計が足りていれば問題ないのでしょうか。勉強会の2つめの質問は、まさにそこを聞いていました。
第2章では、10〜13時間という目安は正しいのかと、夜の睡眠にしかできないこと、昼寝の卒業がいつ来るのか、そして夜遅く寝ること自体の影響を見ていきます。
第2章 「合計で足りていれば大丈夫」は、どこまで本当か
10〜13時間という数字の、正しい読み方
米国睡眠医学会は2016年、小児の推奨睡眠時間を年齢別に示しました#10。1〜2歳は昼寝を含めて24時間に11〜14時間、3〜5歳は10〜13時間、6〜12歳は9〜12時間です。勉強会の質問にあった3歳の子は、22時に寝て6時半に起きるので夜が8時間半、園で2時間昼寝をしていれば合計10時間半で、数字の上では範囲の中に入ります。
しかし、この目安には2つの注意点があります。
以後は、登録いただければ読むことができます。是非この機会にご登録ください。
第2章 「合計で足りていれば大丈夫」はどこまで本当か。10〜13時間という目安の正しい読み方、夜の睡眠だけが持つ役割、昼寝の卒業はいつ来るのか、遅い就寝と親の働き方
第3章 園に頼めないなら、親が動かせる三つのダイヤル。夕方の光の量と色、寝床に入る時刻の決め方、園との話し方と連絡帳の文例、年齢別の目安と受診のサイン
第4章 自分がこの問題をどう見ているか
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