高学歴AV男優が考える「子どもへの性教育」
~日本の性教育やAVのあり方~【後編】

人気対談シリーズの後編です。
今西洋介 2026.01.27
読者限定

今回は日本の性教育やAV(アダルトビデオ)などの性的コンテンツのあり方について、最難関国立中高一貫男子校の筑波大学附属駒場中学校・高等学校出身で、高学歴AV男優として知られる森林原人さんと対談しました。前回配信した続き、後半になります。

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森林原人(もりばやし・げんじん)

日本で最も活躍するAV男優の一人。出演本数2万本以上。最難関国立中高一貫男子校の筑波大学附属駒場高等学校を卒業後、AV業界に進んだ異例の経歴を持つ。最近は依頼を受けてのAV男優としての出演を減らし、性愛コミュニケーターとして活躍。性愛に関わる事象の経験、研究、考察を通して、性の本質は「つながり」であり、セックスとは「ふれあい」であると考え、その発信に力を注入している。

森林原人オフィシャルウェブサイトはこちら→ https://t.co/hRRoiDCspI

Xアカウントはこちら→ https://x.com/AVmoribayashi?s=20

※センシティブな内容が含まれています。閲覧にはご注意ください。

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【今回の記事の関連書籍はこちら】

AV出演によるトラウマの再演

今西:私はトラウマに関する研究もしています。

過去に経験したつらい出来事を無意識に繰り返してしまう「トラウマの再演」という現象がありますが、性暴力被害者の支援者の人たちの間では、性風俗業に従事する女性のなかで性被害を経験した人がいることがよく知られています。トラウマの再演により、女優や男優をしている人がAV業界にも一定数いるという話を聞きました。実際のところはどうなのでしょうか。

森林:うーん、どうなのでしょうね。僕は「トラウマの再演」という言葉を最近知ったくらいなので詳しくはわからないです。そういえば、AVに対してものすごく否定的な発言をする教育系ジャーナリストの方から対談したいと連絡がきたことがありました。僕は男優ですし、AVのことで怒られるのかなと恐る恐る対談に行ったところ、「お久しぶりです。私〇〇って名前で昔AV女優をやっていました」って言われて。さらにその人は、「私はトラウマの再演でAV 女優をやっていたんです」と言っていました。トラウマの再演で僕が知っているのはそのくらいです。

DVのある家庭で育った子どもは、将来家庭を持ったときにDVを再生産しやすくなるのと同じなのでしょうね。さきほどの話とつながりますが、性加害的なAVコンテンツで育った人は、将来的に性加害的なセックスを無自覚にしてしまうと思います。

今西:そうですよね。私もそう思います。そのような思考回路になってしまうのでしょうね。

森林:性加害者の治療に取り組む専門家から聞いた話では、痴漢の加害者のほとんどが痴漢ものの作品を観ていたらしいのです。ですから、AVの性加害者への加担というか、影響は確実にあるとおっしゃっていました。性加害の作品を観つづけて作品だけでは満足できなくなると、実際に女優に会いに行って相手が嫌がるようなことを言うなどの加害行為をするんですよ。

今西:小児科医のなかで最近ACEs(小児期逆境体験)という概念が広まってきていて、これは子どもが18歳までに経験するトラウマにつながりかねない出来事のことを指しています。ACEsの伝統的な判断項目は全部で10項目で、経験する項目が多ければ多いほど、将来的に子育てや人生、健康に影響を及ぼすことがわかっています。

ACEsの影響を和らげる存在として、PCEs(小児期保護体験)という考え方があります。これは親からの無条件の愛や親友の存在、家族以外のおとなからのサポート、社会集団の一員になるなど、ポジティブな体験や社会的支援があればトラウマは治療できるという考え方で、こちらも注目されています。

性産業関連で働く人のなかにはACEsを抱えている人が多いということがわかっています。元男優の自殺率が高いと感じているという話がありましたが、人間関係がないまま社会に出ることはすごく危険なことで、 やはり自殺とか悲劇的なことにつながりやすいです。PCEsのなかには「地域のお祭りに参加する」という項目もあるのですよ。

森林:お祭りですか!

今西:お祭りに参加することで、地域にネットワークが生まれるのですね。専門用語でいうとソーシャル・キャピタル(社会関係資本)という言葉になりますが、日本人はソーシャル・キャピタルの水準が高い民族だといわれています。

森林:地域のネットワークはリアルなつながりでなくてもいいのですか?

今西:リアルじゃなくてもいいです。SNSで繋がっているだけでもいいですよ。ソーシャル・キャピタルの水準が高ければ高いほど、公衆衛生学的にいえば健康に近づくといわれています。

AV女優が抱える孤独「居場所のなさ」

森林:僕が女優の人たちに感じるのは、自分の居場所のなさをずっと抱えてきた人が多いということです。女優のなかには「私セックスだけは褒められるんです」と言って業界に入ってくる人がいます。勉強はできないし、運動もイマイチ。ビジュアルもそこまでよくないし、特技もなかった。何者かになりたくてもなれなかった人たちがこの世界で何者かになるには、セックス一つだけをがんばればなれるんじゃないかという発想です。性被害に遭ったわけではないけれど、何者にもなれなかったことがトラウマになっているのかもしれません。普通セックスした相手にけなされることって、ほとんどないと思うんですよ。

今西:そうですね。普通ないですね。

森林:その場限りの出会いだったとしても、そのときには、相手に「気持ちよかったよ」とか「最高だったよ」って言うじゃないですか。「私、勉強はできないし、可愛くもないし、何か才能があるわけでもないけれど、セックスだけは褒められる。 私にはセックスの才能がある。 セックスだったら世の中で勝負できるかも」という安直な考えの人が業界には結構いるんですよ。

今西:セックスが社会へ出る糸口になっているのですね。

森林:確実になっています。けれども、やっぱりパンツを脱ぐという決断は、社会において決定的な大きな一線じゃないですか。その一線を飛び越える勇気さえ出せば「私は社会で相手にされる」って思うのでしょう。

女優のスカウトマンや事務所の人たちも「君も〇〇ちゃんみたいになりたい?」と言って勧誘します。勧誘に成功したら、提携の美容クリニックで整形手術をさせて事務所が手術代を立て替え、提携のホストクラブを紹介するのです。

今西:提携のホストクラブ?

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続きは、6059文字あります。
  • AVやホストクラブをアングラ化させない
  • AVは性加害の原因になる?
  • 子どもがAVを観ていたときの親の振る舞い方
  • AV業界の表現の自由について
  • 学びで性行動は変わる

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