日本の子ども達の運動能力は危機的に低下している?

今回は一時期話題になった子どもの運動能力の話です。
今西洋介 2026.04.15
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皆さんこんにちは。

いつも本ニュースレターを読んで頂き誠にありがとうございます。

先週のダンス大会では、うちの娘達のチームは次点で敗退してしまいました。決勝進出できずです。結果は残念でしたが、米国で挑戦したのは彼女の人生にとって良い経験だったように思います。

早速、翌週にはダンスの練習に行っていました。今回の残念な結果にめげず、前向きに色んなチャレンジをしてもらいたいものです。

一方で長女のバスケチームはLA内での大会で優勝を果たし、人生で初めて優勝トロフィーを掲げる写真を取りました。こっちは「勝って兜の緒をしめよ」で引き続き頑張って欲しいものです。

長女はバスケ、次女はダンス、三女はジムナスティック?と運動三姉妹状態ですが、今回はそんな子どもの運動に関わる話題を進めていきます。

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「2007年の5歳児の動きが、1985年の3歳児レベルにまで落ちている」

こんな話を聞いたことがありませんか?

この知見は日本学術会議が2017年に出した提言「子どもの動きの健全な育成をめざして」の中でも引用されており、決して根拠のないSNSでの噂ではありません。

ただこの話や数字だけが一人歩きをして、必要以上に不安をあおったり、あるいは逆にそんな事はないだろうと過小評価してしまったりするリスクがあります。

今回は、原著論文や国際的な大規模研究に立ち返りながら、子どもの運動能力に何が起きているのか、なぜそうなったのか、そして私たちに何ができるのかを、冷静に掘り下げてみたいと思います。

発達外来で日々お子さんを診ている小児科医の立場から、育児中の保護者の方々に知って欲しいエビデンスを整理しました。

数字が語る「動きの質」の低下

中村らの研究が示した衝撃的なデータ

まず、冒頭の「5歳児が3歳児レベル」という知見の出典を確認しましょう。

これは中村和彦らが2011年に発表した研究です(#1)。

この研究では、1985年と2007年に保育園に通う3〜5歳の子どもたちを対象に、走る・跳ぶ・投げる・捕る・つく・転がす・平均台を移動するという7種類の基本的動作を比較しました。

ここで重要なのは、タイムや距離といった具体的な数ではなく、動きの質を観察的に評価する手法を用いたことです。たとえば、走るであれば、ただ速く走れるかではなく、腕の振り方や脚の運び方など、走り方のフォームそのものがどの発達段階にあるかを専門家が評価しました。

その結果、2007年の子どもたちは捕る行動を除く6つの動作すべてで1985年の子どもたちより有意に低い発達段階にとどまっていました

そして、2007年の年長児の動作発達得点が、1985年の年少児とほぼ同じ水準だったのです。この差はp<0.001と統計的にも非常に強い有意差であり、男児でも女児でも同様のパターンが確認されています。

この結果をわかりやすい例えで考えてみましょう。

たとえば投げる動作で言えば、5歳の子どもが1985年であれば体をひねって重心移動を使った投げ方を習得し始めているのに対し、2007年の同じ5歳の子どもは手だけで前に押し出すような、3歳児に典型的な投げ方のまま留まっているイメージです。見た目には同じ投げる動作でも、その中身の成熟度がまったく違うのです。

この研究のポイントは、体力テストの記録が下がったという話とは少し違うところにあります。50メートル走のタイムが何秒遅くなったとか、ソフトボール投げの距離が何メートル縮んだといった数量的な低下ではなく、走り方そのものや投げ方そのものが未熟なまま留まっている、つまり動きの発達そのものが遅れているという、より根本的な問題を指摘しているのです。

新体力テストでは走るタイムは測れますが、腕を振らずにバタバタと走っているのか、きれいで効率的なフォームで走っているのかは区別できません。中村らの研究が画期的だったのは、まさにこの動きの質を可視化したことにあります。

回復傾向だが回復しきれていない

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