ハンタウイルス感染症で子ども達が気をつけるべきこと
皆さん、こんにちは。
5月サポメン記事2本目です。
GWも終わり、仕事や学校に復帰された方も多いのではないでしょうか。
ちょうど4月から保育園に行き始めたお子さんも多かったため、このGWもかぜ症状に苦しんで、GW明けに小児科さんの方に受診した親御さんも多かったのではないでしょうか。
そんな中、また気になるニュースが入ってきました。ハンタウイルスのニュースです。今回はこちらを取り上げたいと考えています。
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この数日、ニュースで「ハンタウイルス」「クルーズ船で集団感染」「死者3名」という見出しを見かけて、不安になった親御さんはとても多いと思います。報じられているのは、乗客乗員およそ150人(うち日本人1名!)を乗せて南大西洋を航行中のクルーズ船「MVホンディウス号」での集団感染疑い事案です。
WHOは2026年5月7~8日にかけて、5名の感染確定と3名の感染疑い、計3名の死亡を公表し、原因は南米由来のアンデス株であると発表しました。WHOのテドロス事務局長は「アンデス株の潜伏期間は最長6週間で今後さらに症例が報告される可能性がある」と注意喚起しつつも、「公衆衛生上の脅威は依然として低い」とコメントしています。
その後、寄港予定のスペイン領カナリア諸島・テネリフェ島では港湾関係者が「仕事ができなくなる」と寄港反対のデモを行い、英国政府も同船関連でトリスタン・ダ・クーニャ島に滞在中の自国民に新たな感染疑いが報告されたとして、症状のない乗船者にも45日間の隔離を要請するに至りました。船内で起きた感染、人から人へとうつる可能性が指摘されている「アンデス株」、寄港地での抗議、長期隔離。次々と流れてくる強いキーワードに、保育園や学校で「日本でも流行るの?」「子どもにうつったらどうしよう」という声が広がるのも、自然なことでしょう。
「先生、ハンタウイルスって子どもは大丈夫なんですか?」という質問を毎日のように受けるようになったと同僚から聞きました。
今回はあえてこの出来事をきっかけに、ハンタウイルス感染症と子どもの関係を、最新の研究データとともに冷静に整理しておきたいと思います。結論を先取りすると、今回のクルーズ船のニュースは「特殊な状況下で起きた、特殊な型による出来事」であって、日本で日々お子さんを育てている皆さんが、今夜から不安で眠れなくなるような話ではなさそうです。なぜそう言えるのか、これから順番にお話ししていきます。
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ハンタウイルスってどんな病気?
ネズミの体液から人へ運ばれるウイルス
ではハンタウイルスとはなんでしょうか?
娘にこれ知ってる?と聞いてみると、何か狩られるように感染するみたいで怖い、という率直なご意見を頂きました。うーん、それはハンター(狩人)に引っ張られてる気がするけど。。。
実はハンタウイルスはハンターからきているものではありません。
「ハンタ」は、韓国の漢灘江(ハンタン川/Hantan River、英語表記では Hantaan River とも)に由来します。
もともと朝鮮戦争のころ、韓国の非武装地帯付近で「韓国出血熱」と呼ばれた病気が問題になり、後にその原因ウイルスが分離されました。そのウイルスが、流行地域を横切るハンタン川にちなんで Hantaan virus(ハンタンウイルス) と名づけられ、そこからこのウイルス群全体が hantavirus(ハンタウイルス) と呼ばれるようになりました。
つまり、「ハンタ」はハンターや狩猟とは関係なく、地名由来です。
ハンタウイルスは、もともと野生のネズミ(齧歯類)が体内に保有しているウイルスです。ネズミ自身はほぼ無症状のまま、生涯にわたって尿・糞・唾液にウイルスを排泄し続けます。人への感染は、これらが乾燥して空気中に舞った微粒子を吸い込むことで起こります。蚊やダニが媒介するわけではなく、人と人の日常的な接触で広まるわけでもありません(#1)。つまり「ネズミと接点のない場所では基本的に発生しない」と基本的に考えられている病気です。
ハンタウイルスは1種類ではなく、世界各地で20を超えるタイプが確認されています。それぞれが特定のネズミと共生関係を結んでいて、ネズミの種類が違うとウイルスも違うという、地域性の強いウイルス群なのです(#2)。ですからニュースでハンタウイルスと一言で語られていても、その中身は地域や流行ウイルスによってかなり異なります。
大きく分けて二つの顔 (HFRSとHPS)
ハンタウイルス感染症の臨床像は、大きく二つに分けられます。一つは「腎症候性出血熱(Hemorrhagic Fever with Renal Syndrome:HFRS)」と呼ばれるタイプで、ユーラシア大陸(東アジア・ヨーロッパ・ロシア)に分布します。発熱、頭痛、強い腰痛、急性腎障害、出血傾向などが特徴で、原因ウイルスはハンタンウイルス、ソウルウイルス、プーマラウイルスなどが代表的です(#3)。
もう一つは「ハンタウイルス肺症候群(Hantavirus Pulmonary Syndrome:HPS、心肺症候群HCPSとも)」で、こちらは南北アメリカ大陸でしか報告がありません。風邪のような前駆症状から、わずか数日で肺水腫とショックに進行するのが特徴で、北米のシンノンブレウイルス、南米のアンデスウイルスが代表です(#4)。HFRSとHPSでは標的となる臓器、今回で言う腎臓 vs 肺も、致死率も、地域も異なります。同じハンタウイルスでも、起きる場所と病気の中身が全く違うことを最初に知っておいてください。
日本にハンタウイルスはいるのか
「日本にもハンタウイルスはいるんですか?」という質問は本当によく受けます。
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