発達障害の子どもに特化した中学受験塾とは?〜塾講師・松本先生との対談〜【前編】

今回は日本でも珍しい発達障害の子どもに特化した塾の講師である松本先生と対談しました。
今西洋介 2026.04.28
読者限定

皆さんこんにちは。

4月6本目ですね。

4月ももう終わりそうですが、読者の皆様はいかがお過ごしでしょうか?

保育園に行き始めたお子さんは早速風邪症状が出ているのではないでしょうか。とても辛いと思いますが、皆さんが人生で一度は通る道ですから対症療法で様子を見るしかありません。育児はまだ始まったばかり、気長に行きましょう。

さて今回は、日本でも珍しい発達障害の子どもに特化した塾の講師である松本先生と対談する機会を頂きました。話的にとても興味深い内容だったので、皆さんにシェアします。

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松本先生のご著書

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松本力哉(まつもと・りきや)

東京学芸大学卒業後、2 年間の社会経験を経て、同大学院教育学研究科へ進学し、特別支援教育(発達障害)を学ぶ。その後13 年間、都内公立中学校通常学級・特別支援学級および特別支援学校の教諭を経験。公教育からさらにもう一歩踏み込んだ個に寄り添う丁寧な支援を実践したいという思いから、2014 年、東京都世田谷区で勉強が苦手な子どもや発達障害の子ども、グレーゾーンの子どもの学習指導を行う学習支援室を開設。教員時代から ゴリラ先生と呼ばれ親しまれていたため、ゴリッキー先生の愛称で活動している。YouTube チャンネル「ゴリッキー先生の発達障害お悩み解決チャンネル」では、科学的知見に基づいた情報を全世界に発信中。

Xアカウントはこちら→ https://x.com/goricky_office

学習支援室世田谷つばき塾はこちら→ https://tbk-setagayajuku.com/

ゴリッキー・オフィス世田谷→ https://gorickyoffice.com

公式YouTubeチャンネル『ゴリッキー先生の発達障害お悩み解決チャンネル』→ http://bit.ly/4n25CZf

私の著書

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今西:本日はお忙しい中、ありがとうございます。松本力哉先生のことをご存知ない方もいらっしゃると思いますので、まずは自己紹介からお願いできますか。

松本力哉先生(以下、松本):はじめまして。

学習支援室世田谷つばき塾代表の「ゴリッキー」こと松本力哉です。私は東京学芸大学大学院で特別支援教育(発達障害)を学び、その後13年間、都内の公立中学校の通常学級・特別支援学級および特別支援学校で教諭をしていました。公教育からさらにもう一歩踏み込んだ個に寄り添う丁寧な支援を実践したいという思いから独立し、2014年からは東京都世田谷区で、発達障害やグレーゾーン、勉強が苦手な子どもたちにマンツーマンの学習指導を行っています。
独立して気づいたのが、学校だけでなく塾の学習においても「発達障害の特性に配慮した学習指導をしてほしい」という保護者からの声が多いことです。当初は学校の補習を中心に行っており、発達障害の子どもの中学受験指導は想定していなかったのですが、保護者からの要望に応えていくうちに事業の柱の一つになっていったという感じです。

今西:話が脱線しますが、「ゴリッキー」の愛称の由来を教えてください。

松本:ええ、教員時代に生徒から「顔がゴリラに似ている」と言われ、「ゴリラ先生」との愛称で呼ばれていました。名前が「力哉(りきや)」ということもあり、自分の名前を活かし、独立にあたっては「ゴリッキー先生」の名前で情報発信しています。

私は『ゴリッキー先生の発達障害お悩み解決チャンネル』というYouTubeチャンネルをもっているのですが、YouTubeを始めたての頃、はじめてコメントが付いて「うわー!コメントだ!」と喜んで見たところ、「顔が怖すぎて話が入ってこない」というコメントをいただきました……。ほろ苦いYouTubeデビューの思い出ですね。その次にきたコメントは、「ゴリラが喋ってる!!」というものでした。後から、そのコメントは中学の教員時代の教え子からということがわかりました笑。

今では「ゴリッキー先生」とたくさんの方に呼んでいただけるようになり、浸透してきたなと感じています。

今西:話を戻します。発達障害に特化した学習塾って全国的に珍しいですよね。生徒さんはやはり東京・世田谷にお住まいの方が多い地域密着型の塾なのでしょうか。

松本:そうですね。発達障害に特化した学習塾は少しずつ増えてはきていますが、少数派かもしれませんね。つばき塾は世田谷区を拠点にしていますが、生徒の中には1時間近くかけて、例えば神奈川県横浜市や東京都狛江市、杉並区などから通ってきてくれる子どももいます。発達障害の特性を踏まえた学習塾が、自宅の近くには少ないということなんでしょうね。

今西:つばき塾ではどのような指導を行っているのですか。

松本:つばき塾では入塾の際に最初に保護者と面談、そして発達障害の子どもと保護者との三者面談を実施して、子どもの学校や家庭での様子や保護者の困り事を把握します。そして、WISC等の診断結果をお持ちならば、検査結果の内容を踏まえた学習指導方針を提案しています。
決められた教材やメソッド・マニュアル等は採用しておらず、保護者や子どもからの様々な情報を元に最適なテキストを探して、必要に応じて子どもに合わせた当塾オリジナル教材を作成しています。小学生は完全マンツーマン指導です。生徒一人ひとりの特性や学習上のクセを把握して、それぞれに合わせて学習内容と教え方をカスタマイズしているのが特徴です。
2025年6月に発達障害の子どもの中学受験に関する著書を出版したこともあり、最近では中学受験関連の問い合わせが増えています。発達障害の子どもの学習方針についてのアドバイスなど、中学受験コンサルティングも行っています。

中学受験によるバーンアウト(燃え尽き症候群)は?

今西:私は新生児医療を専門にしています。新生児医療というと、NICU(新生児集中治療室)のイメージが強いと思いますが、仕事の領域はNICUでの治療だけではありません。NICUに入院した赤ちゃんは、早産や低出生体重が原因で発達障害のリスクが高くなることがあります。このため、NICU退院後も引き続き発達外来という専門外来で、だいたい就学後8歳ぐらいまで、その子の発達をフォローアップしています。
発達外来で診ていた発達障害の子どもたちのなかには中学受験に挑戦する子どもがいます。なかには受験勉強で燃え尽きてしまい、一生懸命に勉強して入学したのに不登校に陥る子どももいます。バーンアウト(燃え尽き症候群)や不登校を防ぐために、私たちおとなができることありますか?

松本:私の経験としては、塾には通っていたけれど小学校では不登校で、その後私立中学に入学したものの再度不登校になったという事例はありましたが、「中学受験によるバーンアウトで不登校になった」という事例はないです。お話を伺っていて思ったのが、その子どもは中学受験によるバーンアウトによって不登校になったというよりも、小学校時代から不登校だったのではないでしょうか。中学受験によるバーンアウトならば、受験終了後すぐに不登校になるなどなんらかの症状が出ると思うので、そもそも中学校の入学式にも出席できないと思います。

受験によるバーンアウトを防ぐといった観点からお話ししますと、子どもに受験勉強で無理させないことが大切だと思います。保護者がそのことを理解していても子どもががんばりすぎてしまうことがあるので、保護者は模試の結果に一喜一憂せず、良い成績のときにもあまり褒めすぎないで子どもに「休むことも大切だよ」と繰り返し伝えましょう。

今西:保護者としては難しいことではありますが、模試の結果に一喜一憂しないことは大切ですね。

松本:親子で一緒に気分転換するなどの工夫も重要です。

受験勉強中に子どもの苛立ちや焦りが見えたら、それを受け止め話し合いましょう。

保護者は「がんばればうまくいく」とは言わず、子どもが無理せずに努力することが大事で、「なるようになる」、「不合格は悲しいけど人生終了じゃない」、「受験の経験は無駄にならない」という考えを繰り返し伝えていくといいでしょう。

特に、こだわりが強い子どもは納得しにくいかもしれませんが、保護者の考えとしてそういった姿勢を示すことが重要です。
発達障害の子どもの場合、入学した中学校が思っていたものと違うといった理由や、発達の特性上、新しい環境に慣れにくいという理由から適応できないことがあります。このような場合は、事前に写真や動画など視覚的な情報を使って入学後の雰囲気を伝えておくといいでしょう。ただし人生においては予想外のことは避けられないので、保護者が動じずに対応することが何より重要です。 ‎

今西:なるほど、そうですね。

松本:不登校の子どもが部活への入部をきっかけに再登校することがあります。子どもにとって部活の存在は大きいです。好きな部活があればそこで仲間ができますしね。小学校時代に気の合う友達ができにくかった ASD(自閉スペクトラム症)の子どもでも、部活で仲間を見つけられることが多いようです。ASDの子どもにとっては、一人でも友だちが学校にいれば心の拠り所になるのです。

子どもの得意を伸ばすのに親ができること

今西:この質問は私の育児相談になってしまうのですが……。私は、中学生の長女、小学生の次女、幼稚園生の三女の三姉妹の父親です。三姉妹のうち長女は感性が豊かな性格で作文が得意です。彼女の書く文章は、親の私が読んでも感動するくらい素敵です。一方で、彼女には何かを極めたいというこだわりがなかったり、性格が消極的だったりと気になることもあります。誰にでも発達の凸凹はありますが、子どもの得意なことを伸ばすために親ができることはありますか?

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続きは、3339文字あります。
  • 先取り学習が子どものやる気を引き出す
  • 保護者の育てやすさを重視し診断名をつけないことも
  • 医療と教育の情報連携

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