化学調味料が子どもの花粉症を引き起こす?
読者の皆さん、こんにちは。
5月3本目ですね。五月晴れですっかり天気がよさそうですね。
4月のまだ寒い時期からだんだん初夏に向かっていくこの季節は本当に好きです。
さて今回はこの時期多い花粉症です。化学調味料が子どもの花粉症を引き起こすのは本当でしょうか?今回はこの説を検証してみました。
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いつも配信になるほどなと思いながら毎回楽しみにしております。
子どもの花粉症についてです。7歳になる子どもが花粉症を発症したのですが、過去に比べて子供の花粉症は増え、低年齢化していると聞きました。また、化学調味料などが花粉症を誘引する一因となったいると聞いたことがあるのですが本当でしょうか?
お子さんが7歳で花粉症を発症されたとのこと、確かに心配ですよね。毎年来るこの季節がつらい時間になってしまうのではないかと不安になる気持ちはわかります。自分は幼少期から重度のアトピー性皮膚炎だったためか(今はすっかり寛解)、花粉症とは無縁な人生でした。子どもたちが涙目になりながら鼻をかみ、外遊びを嫌がったり夜眠れなったりするのは見ていて辛いですよね。
今回いただいたご質問は二つあります。
一つは「花粉症は昔より増えていて、低年齢化しているというのは本当か」。
もう一つは「化学調味料が花粉症の原因という説は本当か」というものです。
実はこの二つの問いは、現代日本のアレルギー医療を考えるうえで、とても本質的なテーマを含んでいます。ひとつずつ整理していきましょう。
花粉症は本当に増えているのか
日本の疫学データが示す現実
まずは数字を確認しましょう。
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会は、1998年、2008年、2019年と、ほぼ10年ごとに「鼻アレルギーの全国疫学調査」という大規模な調査を行ってきました(#1)。これは耳鼻咽喉科医とそのご家族、合わせて数千人規模を対象に、症状の有無や検査結果から有病率を推定するもので、日本のアレルギー性鼻炎・花粉症の動向を追ううえで最も信頼性の高いデータの一つです。
下のグラフを見てみると、花粉症を始めアレルギー性鼻炎全体が年々増えていることがわかります。

#1より引用
更にこの調査によれば、スギ花粉症の有病率は1998年に16.2%、2008年に26.5%、2019年には実に38.8%に達しました。20年あまりで2.4倍です。
これは大人を含めた数字ですが、子どもに限定しても、同じくらいの増加幅が見られます。具体的には、5歳から9歳の子どもにおけるスギ花粉症の有病率は、1998年の7.2%から2019年の30.1%へと、4倍以上に増えています(#1)。日本の子どもが花粉症を発症しても、もはや珍しいことではないというのが、今の現状と言えるでしょう。

#1より引用
低年齢化の実態
「低年齢化している」というのも、噂や印象論ではなく、客観的に裏づけられている事実です。日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会が監修する『鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版』でも、子どもの花粉症の発症年齢が早まっており、未就学児からの発症例が珍しくなくなったことが明記されています(#2)。
私自身、外来で2歳の子が春先になると鼻水とくしゃみが止まらないと相談を受け、調べてみるとスギ花粉のアレルギーだった、というケースが確かに珍しくなくなりました。
私が医師になった20年前であれば2歳児の花粉症は教科書的にはまれな存在でしたが、今や日常的な臨床像になっています。お子さんが7歳で発症されたというのは、その意味では特別に早いわけでもなく、むしろ今の日本の平均的な発症年齢のひとつと言えるかもしれません。
なぜスギ花粉症が日本でこれほど増えたのか
ではなぜ、日本でこれほどスギ花粉症が増えたのでしょうか。
最も大きな構造的要因は、戦後の植林政策にあります。第二次世界大戦後、日本は荒廃した国土の復興と建材需要に応えるため、成長が早く真っ直ぐに育つスギを大量に植林しました。林野庁の統計では、スギの人工林は現在も日本の森林面積の約18%、約450万ヘクタールを占めています(#3)。
最近、ご自身も花粉症であることを告白された鈴木農林水産省大臣が「スギ人工林を2割減らす!」と公言され話題になりましたね。
スギは樹齢30年を超えると花粉を盛んに放出するようになるそうです。1950年代以降に植えられた木々が次々と花粉を出す年齢に達したことで、現代日本は世界的にも稀なほど大量の花粉が毎年空に放たれる国になりました。
さらに、気候変動の影響で、気温上昇により花粉の総量が増え、シーズンも長くなる傾向があることが、世界アレルギー機構の声明でも指摘されています(#4)。お子さんが花粉症を発症しやすい時代なのは、子どもや家庭の側の問題ではなく、日本という国の花粉量そのものが構造的に増えているからなのです。
花粉症が増えている本当の理由
衛生仮説、きれいすぎる環境の罠?
ただ、花粉量が増えただけでは説明しきれないこともあります。
同じ量の花粉を吸っても、アレルギーになる子とならない子がいる。なぜアレルギーを発症する子ども自体が増えているのか。ここで欠かせないのが「衛生仮説」という考え方です(この考え方は一部議論が続いているところなのでご注意)
1989年、イギリスの疫学者は、兄弟が多い家庭ほど花粉症の子どもが少ないというデータを報告しました(#5)。年上の兄弟がいる子は感染症をうつされる機会が多く、免疫が本当に戦うべき敵を見分ける訓練を受ける、そのおかげで、本来攻撃しなくてもよい花粉などに過剰反応しにくくなる、という仮説です。
その後、ヨーロッパの研究グループは、農家で家畜と触れ合いながら育った子どもはアレルギーになりにくいことを、6,000人以上の子どもを対象にした大規模研究で示しました(#6)。
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