ポルノ依存症の原因は?我が子をポルノから守るには
さて3月もスタートです。皆様いかがお過ごしでしょうか。
自分は最近知人が米国に遊びに来ていて、久しぶり外出しました。普段こちらにいると平日は仕事と子ども達の送迎、週末は娘達のバスケで潰れてしまうので最近外出する事がないので、新鮮でした。
これから今月分のニュースレターも巻き返していこうと思いますのでよろしくお願いします。
今回は久しぶり長文バージョンです。
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2025年、ポルノ問題に揺れる米国

写真: Charlie Neibergall/AP
ドナルド・トランプ大統領になって早1ヶ月半。
まだ1ヶ月半しか経過していないのに、米国の情勢はすでに激動です。科学の世界は政治によって捻じ曲げられつつあり、政府機関の多くの職員が解雇されています。
そんな中、米国では1つの問題に関する議論が活発化しています。
それは「アダルトコンテンツを撲滅させるかどうか」です。
米国の保守系シンクタンクであるヘリテージ財団によって2023年に発表された政治的取り組み「プロジェクト2025」は米国の連邦政府を再編し、共和党の政策に有利となるよう行政権を強化するものです。このプロジェクト25の支持者の多くは、このプロジェクトによってほとんどがリベラルである政府の官僚機構を解体できると主張しています。
これには、違法移民の国外追放、極端な中絶制限、国土安全保障省(DHS)や教育省(ED)の解体、法人税やキャピタルゲイン税の削減、メディケアやメディケイドの削減、化石燃料を優遇する環境規制の削減、国立衛生研究所(NIH)の独立性を低下させること等、数々の目標が含まれていて、既に実行されたものもあります。
あまり知られていませんが、この中に「ポルノの制作・配信を全面的に禁止する」という内容も含まれています。このプロジェクト25を支持する保守派層は、ポルノが性犯罪や性暴力の増加、青少年の悪影響を招くと主張しています。
プロジェクト2025でポルノの制作・配信を全面的に禁止する事が実現すれば、違反者には厳しい罰則が科せられ、実現すれば米国社会にも大きな変化が予想されます。
この施行に危機感を募らせるポルノパフォーマー達は「Hands off My Porn」キャンペーンを立ち上げました。ここでこの法案が通ることの危険性を主張しています。彼らの言い分では、デジタル空間における「表現の自由」を全面的に主張しています。
子どもが搾取される児童ポルノ禁止は当然であり、これは世界共通の認識で間違いありません。ではポルノ全体の規制自体はどうでしょうか?
ある最新の研究結果を元に、今回はこの問題を考えていきましょう。私は小児科医ですので、その視点からこの問題を考察します。
子どものポルノ視聴実態
近年、日本の児童・生徒によるポルノ視聴が懸念されています。
令和5年度のこども家庭庁の調査によれば、小中高あわせた青少年全体の約3.9%が「親に話しにくいサイト(アダルトサイト等)を見たことがある」と回答しています。この割合は年齢が上がるほど高く、高校生男子では顕著ですが、小学生ではほぼ0%と報告されています(#1)。これは少し実態から離れている結果かもしれません。
一方でアメリカの非営利団体Common Sense Mediaの調査では、13~17歳の実に73%が何らかのポルノを閲覧した経験があり、その初回閲覧年齢の平均は約12歳と報告されています(#2)。日本国内でもポルノを最初に目にする年齢が低年齢化しており、平均で小学校高学年から中学生頃(9~13歳)になっていると専門家から指摘されています。このように日本でも小中高生の一部は早い段階でポルノに触れている実態が明らかになってきています。
これには、スマホの普及とインターネット環境の変化が大きな影響を与えてます。政府調査による「有害サイト閲覧経験率」は、この10年でやや上昇しており、2010年代後半には全体で2~3%台だったものが、最新では4%近くに達しています。大分県が令和2年に発表したある調査では、有害サイトを遮断するフィルタリング機能を利用している家庭は48%にとどまり、小学生の親に至っては3割程度でした(#3)。スマホを既に持っている子ども達は、24時間いつでもどこでもインターネットにアクセスできるので、年齢確認の甘いアダルトサイトを容易に見ることができるから当然と言えば当然ですね。
米国に比べて日本では非常に少ない結果となっていますが、男の子を持つ親ならこの問題は誰でも気になるものでしょう。
ポルノ依存症とは
よく「ポルノ依存症」という言葉を聞きますが、そもそもポルノ依存症ってなんでしょうか?
人は単なる性的刺激だけでなく、ストレス解消や気分転換、好奇心など、いろいろな理由でポルノを見ます。実際、最近の研究でも「職場でのイライラを紛らわすため」「寝る前のなんとなくした習慣」といったかたちで、ネガティブな感情を発散する手段として利用されるケースが多いことが報告されています(#4)。
一方で、ポルノの使いすぎや依存的な使い方は、不安・抑うつや他者とのコミュニケーション減退などを招きやすく、特に夜中に一人きりで延々と視聴し続ける状態が続くと、リアルな人間関係がおろそかになりやすいとの指摘もあります(#5)。その結果、孤独を深めてしまい、さらにポルノ視聴の頻度や時間が増える…という無限の悪循環ループが起こり得るわけです。
また、専門家たちは、思春期の脳がポルノから与えられる影響は大きいといいます。
そもそも子どもや思春期の若者の脳は大人と比べ著しく可塑性が高く、環境刺激の影響を受けやすいです。思春期は脳の報酬系(快感を感じる脳内回路)が敏感になる一方で、前頭前野などの制御系の成熟が未完成な状態にあります。
このため強い刺激へのブレーキが利きにくく、「快楽への欲求>抑制力」というアンバランスが生じやすい時期です。そうした発達段階でポルノという強烈な視覚的な性的刺激に長期間晒されると、脳はその刺激に適応しようとして、報酬系が過敏化または鈍麻化する一方で、衝動抑制の回路形成に乱れをきたす可能性があります。
自分で自分の欲求を抑えられなくなってしまうのですね。
ポルノ依存は個人の性的健康のみならず、対人関係や心理的な側面にも長期的影響を及ぼします。
例えば、長期間にわたるポルノ視聴習慣は実際の恋愛・結婚関係の満足度を低下させる可能性が指摘されています。全米を対象にした縦断研究では、ポルノを頻繁に視聴する既婚者は数年後に結婚生活の質の低下を報告する傾向が有意に高かったとされています(#6)
このように、ポルノは思春期の子どもの脳には刺激が強すぎるのです。
ポルノ依存症の根幹に孤独?
ではポルノを全面的に禁止すれば、人々の問題行動は改善するのでしょうか? 実はそれほど単純ではありません。前章でも述べたように、ストレス解消や気晴らし、好奇心、学習目的など、さまざまな理由で人はポルノを視聴しますが、それが過度に依存的になると自尊心の低下や不安の増大、親密な関係性への悪影響などを引き起こす可能性が指摘されてきました。
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