ダメージを受けたら戻らない子どもの聴力を守るために親ができること
6月も中盤に差し掛かりました。
今回は夏に向けて増えてくる屋外のイベントの話です。コンサートや花火など夏はイベントが目白押しなので、子どもの耳は気になりますよね。
そもそもうるさい音で子どもの耳は難聴になるのでしょうか?今回はこちらを解説します。
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ニュースレターをいつも楽しく拝読しております。ためになるアドバイスいつもありがとうございます。今2歳の子どもがいるのですが、今度子どもを連れて音楽フェスに行こうと思っています。外のフェスなので問題ないかと思っていたのですが、そういえば独身のフェスに行っていた頃、小さい子が耳の保護のためイヤマフをつけていたのを思い出しました。つけて行った方が無難でしょうか?最近の若者はイヤホンの普及もあり、若くても難聴になりやすいと聞きます。アドバイスいただけたらと思います。
今回もQ&Aコーナーから頂いた質問です。ご質問ありがとうございます。
この問題は親としてはとても気になりますよね。うちの娘達もipadでアニメを見ている時は音漏れを気にしてヘッドフォンをつけています。気づけば長期間つけている時もあり、親としてはどうしても気になってしまいます。
子どもの耳は内耳(音を感じ取る部分)や脳へ音を伝える神経の仕組み自体は、まだ成長段階であるとはいえ大人と同じように機能しています。
一方で子どもと大人ではそもそも耳の構造的な違いがあります。
これは若者を対象とした研究ですが、2023年にBMJ Global Healthという医学雑誌に発表された世界中で行われた33件の研究(対象者19,046人)のデータを統合し、12歳から34歳の若者の危険なリスニング習慣の蔓延率を推定した研究では、若者の24%がイヤホンなどの個人用音響を危険な音量で使用しており、さらに48%がコンサートやクラブなどの娯楽施設で危険なレベルの騒音にさらされていると結論づけています(#1)
これにより、世界で最大13億5000万人の若者が、予防可能な聴力損失のリスクにさらされている可能性があると警告しています。
子どもの視力や歯に対しては、聴力は意外とノーマークだったりしますよね。
耳の構造
音が聞こえるという事は脳が作り出す奇跡ですが、その奇跡は耳という非常に精巧でデリケートな器官から始まっています。お子さんの耳を守るためには、まずその仕組みを理解することが第一歩です。
その耳には下の図に示すような外耳、中耳、内耳があります。

ノーベルファーマHPより
まず外耳とはいわゆる「サウンドコレクター」です。一般的に「耳」と呼ばれている部分(耳介)は、空気中の音、つまり振動を効率的に集めるための自然な集音器のような役割をしています。集められた音は外耳道という道を通り、耳の中へと入っていきます。
外耳道の突き当たりには、鼓膜という厚さ約0.1mmの非常に薄く敏感な膜があります。音の波がこの膜に当たると、太鼓の皮が振動するように震えます。この振動は、中耳にある人体で最も小さな3つの骨に伝わります。
この骨はこの原理を利用して鼓膜の小さな振動を約20倍に増幅する、精巧な機械式アンプの役割を果たします。この増幅機能があるからこそ、私たちはささやき声のような小さな音も聞き取ることができるのです。
鼓膜からこの骨までが中耳と言いますが、一方でこの中耳は耳管という管で鼻の奥とつながっており、鼓膜の内側と外側の気圧を調整しています。お子さんが風邪をひいたときに中耳炎になりやすいのは、この構造が関係しているのです。
この骨によって増幅された振動は最終的に1番奥の内耳へ伝えられます。
ここには「蝸牛」と呼ばれる、カタツムリの殻のような形をした、液体で満たされた器官があります。蝸牛の内部には、「有毛細胞」と呼ばれる数千個の非常に繊細なセンサーが並んでいます。これは頭に生えている毛髪とは全く異なり、音を電気信号に変換するための高度に専門化された神経終末です。蝸牛の中の液体が振動すると、この有毛細胞が揺れ動き、機械的な振動を電気信号へと変換します。
この電気信号が聴神経を介して脳に送られ、脳がそれを私たちが認識する「音」として解釈します。
ダメージを受けたら元に戻らない聴力
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