大阪の周産期医療はなぜ「層が厚い」のか〜二大体制・NMCSとOGCSを考える〜

大阪の周産期医療はなぜ層が厚いと呼ばれるのか解説しました。
今西洋介 2025.12.24
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こんにちは。

今回は12月4本目の記事ですね。

米国の中学校は昨日から冬休みに入りました。

冬休みでも日中は半袖で過ごす事が多いカリフォルニアですが、朝や夜は流石に寒くなってきました。米国には正月のいわゆる「三ヶ日」がないので、1月は普段は2日から平常運転なのですが今年は1月2日が金曜なので休みなようです。

新学期は1月5日月曜からですから、久しぶり日本のような冬休みを過ごせるとあって娘達は大喜びです(親は辛い、早く学校に行ってほしいですが)

さて今回は大阪の周産期医療の層が分厚いと言われるかについて解説します。

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数十分の遅れが家族の未来を変える赤ちゃんの医療

皆さんは「周産期医療」という言葉をご存知ですか?

WHOの定義(#1)でも、周産期とは妊娠22週から出生後7日未満までの事を指します。

もちろん日本の法律では妊娠22週でも産まれた場合には救命しないといけないという事が決まっていますので、我々新生児科医は妊娠22週産まれの体重400gとか500gの赤ちゃんを全力で助けに行きます。

ちなみに厳密には世界一成績の良いとされる日本の周産期医療でも、妊娠22週出生はどこから蘇生対象とするかは施設により大きく異なります。

私が最初に働いたNICUでは在胎22週0日から蘇生対象としていましたが、大阪で働いていた大規模の周産期医療施設では在胎22週5日から蘇生対象としていました。この基準はそれぞれの過去の成績によって判断される事が多く、なかなか全国一律にはできない所があります。

22週生まれの赤ちゃんは未熟性が高く、皮膚もまるでゼラチンのようです。我々はそんな赤ちゃんに点滴を入れるわけですが、彼らの腕の太さは自分の人差し指と同じくらいです。それだけ高等な技術が必要です。また点滴を固定するテープを剥がすだけで、皮膚が剥がれます。

こういった技術と経験と組織が必要なので、全国で一律に22週0日から積極的に蘇生をしましょうという事にはなかなかなりません。ならないというか、施設毎の経験や提供できる医療体制も違うので、一律にできないのです。

そして、赤ちゃんの命を守るために、日本にはもう一つ考えなくてはならない問題があります。

皆さんも聞いたことがあるかもしれませんが、それは諸外国に比べて病院よりも診療所(クリニック)での出産が多い事です。2022年のデータでは病院での出生数が416,196人で全体の54%ですが、クリニックで産んだのは349,297人で全体の45%です(#2)

この数字はほとんどが病院で生まれる諸外国に比べれば異様な高さの数字なのです。

この日本特有の差を埋めているのは「搬送」

日本の周産期医療は素晴らしいですが、施設間の格差も残り、さらには病院以外の場所でも出産が行われるという特性があります。

それらを埋めるのに活躍してきたのが「搬送」です。搬送とは救急車やドクターカーで患者さんを医療機関から医療機関へ運ぶことです。

周産期における搬送には、2種類あります。搬送は周産期の中ではたくさん種類があるので、今回は出産における搬送にしぼります。

まず一つは、赤ちゃんが生まれる前にお母さんごと運んでしまう「母体搬送」です。

この母体搬送は、施設の機能や規模により医療が適切に提供できない病院から、分娩前、分娩中の女性に、紹介元病院では提供できないケアを提供できる病院へと運ぶ事を指します。

これにより、母親だけでなく子どもの出生後の予後も良くなる事は古くから知られています(#3,4,5)

そして、もう一つはあまり知られていない、赤ちゃんを運ぶ「新生児搬送」です。

新生児搬送とは、クリニックで産まれた赤ちゃんが何か病的な状態になった時にNICUで治療をするために赤ちゃんを専用のドクターカーで運ぶことを指します。

ここで大事になってくるのが、産まれてきた赤ちゃんの病気は「待ってくれない」という事です。

施設間の新生児搬送に関する研究複数を検討したシステマティックレビューの研究では、90 分を超えて搬送された赤ちゃんは、死亡率が 2 倍以上増えているという結果となりました(#6)

このデータが示すように、赤ちゃんにとって搬送が遅れることは命に関わる事なのです。しかも大人と比べて体が未熟な赤ちゃんは病気の進行が早いのです。

もちろん、赤ちゃんだけでなく、妊婦さんにとっても母体搬送を適切に、かつ迅速に行うことは周産期医療を保つためにはとても大切なのです。

大阪の周産期医療の鉄壁は「搬送システム」

周産期医療者の中で有名な言葉に「大阪の周産期医療は層が厚い」というものがあります。層が厚いという人もいれば、中には「鉄壁」と言っている人もいます。

大阪の周産期医療が「鉄壁」と評される最大の理由は、医療資源の量そのもの以上に、「搬送」を医療提供の中核機能として設計し、24時間365日、常時運用している点にあります。

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