法改正で身近な存在に〜知っておきたい「医療的ケア児」の基礎知識
聞いたことはあるが、実際どんな子ども達なのか。わかりそうでわからない医療的ケア児。皆さんの周りにもいませんか?無知は彼らや家族を傷つけてしまう事になります。今回は新生児科医から小児在宅医へ転身され、10年以上その最前線で彼らを見てこられた「かがやきクリニック」の南條先生にゲストオーサーとして解説して頂きます。まず知る事から始めてください。
ふらいと先生のニュースレターは、子育て中の方が必要な「エビデンスに基づく子どもを守るための知識」を、小児科医のふらいとがわかりやすくお届けしています。
過去記事や毎月 4 ~ 6 本すべての「エビデンスに基づいた子どもを守るための知識」を受け取るには有料コースをご検討ください。
有料読者の皆様からのご支援は、小児専門の性暴力対策センターなどの社会活動団体に一部寄付されます。ご登録お待ちしています!
今回は無料記事です。メールアドレス1つの無料登録で読めます。
はじめまして!
ニュースレターの読者の皆さま、初めまして。
ふらいと先生からのご依頼で今回のレターを書かせていただきます、(医)輝優会かがやきクリニック院長の南條浩輝(なんじょうひろき)と申します。
私はもともとふらいと先生と同じく、NICU(新生児集中治療室)で新生児医療に携わっていました。その中で、NICUを退院した後の子どもたちの支援の必要性を感じ、10年前に開業して、病気や障害とともに生きる子どもたちに往診(訪問診療)を行いながら、さまざまなサポートを行っています。
「医療的ケア児」って?
さて、皆さまは「医療的ケア児」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「何それ?」と思ったあなたのお子さんにも、これから医療的ケア児の同級生や友達ができることがあるかも知れません。特に近年は医療的ケア児が増えていて、意外に皆さまの身近にも住んでいたりしますので、今回のLETTERをぜひ読んでいただければと思います。
「医療的ケア児」とは、NICUなどで治療を受けて自宅へ退院した後にも、引き続き日常的に医療的なケアを行うことが必要な子どものことを言います。
具体的なケアはいろいろあります。
食べることが難しい子どもでは、経鼻胃管(鼻から胃へ入れたチューブ)や胃ろう(お腹から胃へ直接食べ物を入れるために開けた穴)などから栄養を注入したり、中心静脈栄養という点滴による栄養補給を行う場合があります。
呼吸が十分に行えない子どもでは、日常的に酸素を吸入していたり、気管切開という穴にカニューレと呼ばれる管を入れた状態で過ごしていたり、定期的に痰の吸引を必要とする場合などがあります。また、呼吸そのものの力が十分ではない子どもでは人工呼吸器を使っていることもあります。
おしっこやうんちの排泄の機能に問題のある子どもでは、膀胱にチューブを入れておしっこを出す処置を定期的に行ったり、膀胱ろうやストマ(人工肛門)と呼ばれる穴からおしっこやうんちを出すバイパス経路を造っていたりすることもあります。
医学の進歩のおかげで助かるいのちが増えることによって、医療的ケア児は年々増加しています。自宅で過ごしている医療的ケア児の推計値は、平成17年には約1万人だったのが、令和3年には約2万人と、倍増しているのです。(文献1)