同意教育が子ども達に何をもたらすか〜滋賀医大生事件から考える〜
12月4本目です。
明日はもうクリスマスですね。これから一気に年末に突入です。
あと1、2本は書く予定ですが、読者の皆様にはとてもお世話になりました。来年も様々な角度から皆様に科学的に正確な記事をお届けしようと思っております。よろしくお願いします。
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発端
今週、とある判決がSNSで物議を醸しました。
報道によりますと、医学部の男子大学生3人(A・B・C)は2022年3月、男子学生Cの自宅で、別の大学に通う知人の女性大学生に対し性的暴行を加えた罪に問われていました。知人の女子大学生に性的暴行を加えた罪に問われ一審で実刑判決を言い渡された医学部の男子大学生2人について、大阪高裁は18日、逆転無罪判決を言い渡しました。理由について「女子大学生の同意があった疑いが払しょくできない」としています。
まず本記事を書く際に、皆様にお伝えしたい事があります。
本記事では、判決に対してどうこう評価する内容ではありませんので事件そのものへの言及は致しません。それは弁護士さん達がSNSで「無罪判決に対する外野からの当を得た評価は論理的に困難なのではないかと考えている」といった声を聞いて納得したからです。法曹界のプロ達が評価は無理と言っているのに、法律に関して素人の自分は専門外過ぎて言及が困難です。もちろん医大生を庇う気など更々ありませんし、彼らの復学も難しいだろうと感じています。ただ自分は子どもの医療者として今回の報道を通じて皆様にお伝えしたい事を書こうと考えました。
その点は誠に申し訳ありませんが、ご了承くださいませ。
この報道を通じて小児科医である自分が感じた事は、日本における「同意」の重要性を改めてクローズアップする出来事となった事です。
今回の事件の詳細はわかりませんので一般的な話をすると、社会では「相手のはっきりとした同意が必要」という意識が高まっているものの、実際には「相手が何も言わなかった=イエスとは限らない」「嫌がった気配を見逃してしまった」というグレーな状況は起こり得ます。そこでは「本当にお互いに合意していたのか」と立証することが依然として困難であると思われます。
こうした議論が盛り上がる背景には、「加害なのか、そうでないのか」という二極化だけでは説明しきれない事情が含まれています。こういった要素は、日本ではまだ十分に共有されているとは言えません。
そこで大切になってくるのが「子どものうちから日常生活の中で、相手の意思を尊重する練習を積むこと」です。
いわゆる「同意教育」を子ども達に教えていれば、将来こうしたトラブルが起きるリスクを減らせるのではないかと、多くの専門家が指摘しています。
日本ではまだ同意教育があまり一般的でないこともあり、保護者の方々からは「いつ、どのように教えたらいいの?」といった戸惑いの声をよく聞きます。また大人の側からも「性に関する教育は早すぎるとよくないのでは」と感じてしまう文化的ハードルも大きいように思えます。
しかし海外では、子どもが自分や相手の体、そして気持ちを大切にすることを幼い頃から学ぶことで、のちに暴力的行為や性的トラブルに巻き込まれにくくなるという研究が報告されています。
ここからは、同意教育の意義や、すでに世界各地で行われている研究成果を踏まえて、その効果や課題を考えてみたいと思います。
同意教育がもたらす子どもへのプラス効果の研究
同意教育と聞くと「中高生になったころに、性行為について教えるもの」と思われがちですが、実際にはもっと早い段階、つまり幼児期から行えるものです。