自分はなぜ亡くなるお母さんの元へ赤ちゃんを連れていくか

今日は新生児科医の自分がなぜ亡くなる妊産婦のもとへ赤ちゃんを連れていくのかについて話をします。
今西洋介 2024.09.30
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もう9月も終わりで、来月から10月ですね。1年というのは早いものです。

冷房をつけることもなくなり、段々と涼しくなってきました。

秋がいっそう深まってきますね。

さて、今回は突然妊婦さんが亡くなったらの話です。最近SNSでも出産の命懸け問題が話題になりました。自分も妊婦死亡の経験もありますが、ここでは家族や子どもにどのような影響を与えるのかを解説していきます。当然、毎回のように提示するストーリーは今回のために自分が着想したもので、実在の人物とは関係がありません。

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妊婦さんが亡くなるということ

出産は奇跡です。

というのはどこかのドラマの受け売りではありませんが、実際の臨床現場で毎日出産に立ち会っているとそう思う事が多々あります。

新生児科医師を15年していると経験を積むので本当に最初のパニックのような感覚は当然無くなってきますが、立ち会いをしていても心のどこかでは「お母さんや赤ちゃんは無事に生まれてくるのだろうか」という妙な緊張感は決して無くなる事はありません。

ここからはいつもの如く、妊婦さんが亡くなるストーリーをお話しします。これはあくまでこの為だけに用意した私の着想したストーリーです。過去の事例や実在の日時や人物とは関係ありません。もし自分の身に起きたと想像して読んでみてください。

A子さんは妊娠39週、もうすぐ予定日を超えました。お腹の赤ちゃんはまだ生まれる気配がありません。A子さんは今日も忙しく、上の3歳のお姉ちゃんの保育園登園の準備をしています。

仕事に行く夫と保育園に行くお姉ちゃんを見送ってから、早速家事を片付けようとしたその時です。A子さんは股間から冷たいものを感じました。破水したのかと思うと、サラサラとした血液です。そして、呼吸が段々としづらくなり、近くに住んでいた自分の母親に電話をします。

「お願い、なんか変だからすぐ来て!」と言ったまま、A子さんは気を失ってしまいました。

その後、A子さんの母親が救急車を呼びました。近くの高度医療センターに運ばれる事になりました。

血圧を測るとショックバイタルの血圧低下。心拍は保たれています。

病院に着くなり、そのまま手術室へ直行。赤ちゃんの心音を確認後、緊急帝王切開を開始します。

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続きは、5651文字あります。
  • 妊産婦死亡の現状
  • 残された子どもや家族への影響
  • あとがき

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