臍帯血バンクは登録するべきか
出産はおめでたいものです。
我が子が生まれると多くの親が「こんなかわいい我が子のためならいい事をしてあげたい」と思うはずです。実際の新生児医療の現場でもこう言った親御さんの声はよく聞きました。
そんな中でよく聞かれる質問が、
「民間の臍帯血バンクに登録した方がいいですか?」
というものです。
これは実際の新生児医療の現場でもよく聞かれますし、プライベートでも出産された知り合いからよく聞かれます。
その度に同じ回答をしていますが、確かに情報の需要はあると感じています。
今回はこちらを紹介しましょう。
臍帯血とは
臍帯血バンクとは何かを話す前に、まず臍帯血について解説しましょう。
臍帯血とは、お母さんと赤ちゃんを結ぶ臍の緒(臍帯と言います)及び胎盤に含まれる血液のことです。一般的に40~100mlの量があります。赤ちゃんが早産で生まれた場合、その体格は非常に小さいですから、貧血予防に臍帯を絞って赤ちゃんの方に血液を搾り出す臍帯血ミルキングをします。その事で出生後の輸血を削減する事ができるとされています(#1)。それくらい赤ちゃんにとっては血液が豊富に含まれています。
その中には白血球や赤血球といった血球成分の他に、造血幹細胞や間葉系幹細胞といった「幹細胞」が豊富に含まれる事が知られています。
この幹細胞を用いた再生医療、いわゆる幹細胞療法は多くの人々に「希望の光」を与えています。
幹細胞は、自分で次々複製していく(コピーしていく)「自己複製能」と、様々な細胞に変身できる「多分化能」を併せ持つスーパー細胞です。そのため、幹細胞療法はこれまでの薬剤に期待できない治療効果が期待されるため、充分な治療法がないとされてきた病気に劇的に効果がある可能性があります。
この幹細胞療法は、成人領域と比べ新生児領域での応用が遅れていますが、それでも胎盤が剥がれて赤ちゃんが酸欠状態となり頭にダメージを与える低酸素性虚血性脳症(HIE)や、何らかの原因で寝たきりになる脳性麻痺といった病気に関しては、この幹細胞療法の適応に向けた研究が進んでいます(#2)
臍帯血バンクの種類
では、これを使った臍帯血バンクとはなんでしょうか。
臍帯血バンクとは主に大きく分けて2種類です。「公的」臍帯血バンクと「民間」臍帯血バンクに分かれます(#3)
公的臍帯血バンクは厚生労働省からの認可を受けて設立されたバンクで、臍帯血の採取、調製、保存するとともに、その提供者と関係ない患者さんが希望した場合にはその患者さん達に使えるように医療機関へ引き渡しを行います。
公的臍帯血バンクは全国に6箇所あります。北海道さい帯血バンク、関東甲信越さい帯血バンク、近畿さい帯血バンク、九州さい帯血バンク、中部さい帯血バンク、兵庫さい帯血バンクの6つです。
この公的臍帯血バンクの特徴は、血縁者ではない人達の間での造血幹細胞移植に用いる臍帯血の提供体制が確保されていることになります。保管されている臍帯血数は9516件(令和元年時点)にのぼり、移植実績も1年間で1355件(平成30年度)と、着実に成果を出しています。
また、厚生労働省が定めた品質・安全性基準の遵守義務がある事が挙げられます。臍帯血の品質の保管が国によって厳格に守られているのです。
一方、民間臍帯血バンクは・・・