なぜ生徒間の性加害を「いじめ」としたらダメなのか
皆さん、8月ですね!
夏休みはどうお過ごしでしょうか?
我が家は長女と次女が宿泊1週間のサマーキャンプに行っています。日本人0の環境で衣食住を共にするのは英語が伸びる最高の環境なので、とても楽しみにしています(親が)。子ども達は家にいても日本のアニメ視聴時間(1日1話のみ)を隙あれば伸ばしてこようと画策してくるので、彼女達にもいい事だと思っています。
一方で、夏休み期間中は毎日数学を1時間ずつ私がみっちり教えているので、だいぶ進んできました。日々の積み重ねですね。
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学校内性的暴行を「いじめ」認定へ
ある事件の報道がSNSで話題になりました。
三重県四日市市にある高校に通っていた女性は3年生だった2022年、当時交際していた同じ学校の男子生徒から、校内などで20回以上性的暴行を受け、その後、PTSD=心的外傷後ストレス障害と診断されたと訴えています。
学校の話では、「学校が設置した第三者委員会の報告書が6月にまとまり、性行為について同意の有無は認定できないとしつつも、第三者が出入りする可能性がある場所で行われ、女子生徒が心理的苦痛を感じていたことから、いじめとして認定された」そうです。
それに対して私のSNSで呟いたところ多くの反響がありました。

「交際していた男子生徒から校内などで20回以上性的暴行 第三者委員会が性行為をいじめと認定へ 三重・四日市市」 news.ntv.co.jp/n/ctv/category… 交際していた男子生徒から校内などで20回以上性的暴行 第三者委員会が性行為をいじめと認定へ 三重・四日市市|中京テレビNEWS NNN 日本テレビのニュースサイト「日テレNEWS NNN」は政治、経済、国際、社会、スポーツ、カルチャー・エンタメ・芸能、ライ news.ntv.co.jp
この問題に対して皆様の議論を見たかったのであえてこう言う書き方をしましたが、多くの方が指摘しているように問題の本質は「なぜこの性被害がいじめ認定?立派な犯罪では?」と言う事です。
なぜこう言うことが学校内で起きるのでしょうか?また性被害がいじめと認定されることによって子ども達にどのような影響があるのでしょうか?
小児科医として、そして医療情報を社会に伝えるメディカルライターとして、この問題に警鐘を鳴らすことは私の責務です。
子ども同士、特に学校という閉鎖的な環境で起きる性加害は、被害を受けた子どもの心と身体に、生涯にわたって影響を及ぼす深刻な医学的問題を引き起こします。そして、この暴力行為を「いじめ」と誤って呼称することは、被害者をさらに深く傷つけ、適切な支援への道を閉ざし、社会全体の安全を脅かす、二重の加害行為に他なりません。
今回はこの問題を様々な視点から深掘りしていきます。
曖昧な分類に埋もれる学校内の性被害
日本の学校における対人関係の緊張が著しく高まっています。
まずは文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の公式データを見てみましょう。
皆さんご存知の通り、小・中・高等学校におけるいじめの「認知件数」は、近年一貫して増加傾向にあり、過去最多を更新し続けています。
令和5年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によれば、いじめ認知件数は732,568件に達し、前年度からさらに7.4%増加しました(下図)

また暴力事件も令和5年度: 発生件数は108,987件となり、前年度から14.2%増加。新型コロナウイルス感染症の影響で一時的に減少した後、3年連続で増加し、過去最多となりました。
さらに、生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いや、相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある「重大事態」の発生件数も、令和4年度の919件から令和5年度には1,306件へと急増しています。これは、発生件数の増加だけでなく、事案の深刻度も増していることを示唆されているのです。
こういった文部科学省の調査における「いじめの態様」の分類は、生徒間の性加害の実態を把握する上で根本的な限界を抱えています。それは調査項目に「性的な嫌がらせ」や「性暴力」といった明確なカテゴリーが存在しないからです。
最も関連性が高いと考えられる項目は、「嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする」というものです。この項目は令和4年度の調査では、この項目が小学校で5.5%、中学校で8.5%、高等学校で7.0%を占めています。
しかし、このカテゴリーは「ブラックボックス」であり、その内容は極めて不透明です。性的な話題に関わらないからかいから、刑法上の犯罪に該当しうる深刻な性的暴行まで、広範な行為が含まれている可能性があります。
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- 生徒間の性加害はないのか?
- 子どもの性被害がもたらす医学的合併症
- 性被害はなぜ身体を蝕むのか
- なぜ「いじめ」としてはダメなのか
- ふらいと先生はこう思う
- 参考文献
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