三年間で見つけた医療啓発の新しい仕組み

このニュースレターが4年目に突入するので、このニュースレターから学んだことを振り返ります。
今西洋介 2025.10.16
読者限定

皆様、こんにちは。10月も後半になり、一気に秋も深まってきましたね。

実は今日で、ふらいと先生のニュースレターを始めて丸3年が経過しました。

これもひとえに読者の皆様のおかげです。

今回はこのニュースレターを3年間運用してきて学んだことをお話ししようと思います。

ふらいと先生のニュースレターは、子育て中の方が必要な「エビデンスに基づく子どもを守るための知識」をわかりやすくお届けしています。過去記事や毎月すべてのレターを受け取るにはサポートメンバーをご検討ください。

3年間こだわったエビデンスの伝え方

ふらいと先生のニュースレターは本日で運営開始から3周年を迎える事になり、これから4年目に突入です。

このプラットフォームの主テーマは、一貫して「エビデンスに基づく子どもに関する知識」を提供することに置かれてきました。情報の信頼性を最優先事項として、子育てや子どもの医療に関する情報が時に感情論や古い迷信に流されやすい現代において、小児科医としての専門性と科学的根拠(EBM)に基づいた知見を提供し続けてきました。

このニュースレターを始めたきっかけはあるオルドメディアに言われた指摘でした。

オルドメディアで連載を持っていたのですが、その編集部に「参考文献をもっと削って、全体の文章をもっとナラティブな話にしてほしい」と言われた事でした。

元々ナラティブだけの話なら専門職の自分が書かなくて良いし、自分が書くならエビデンスを元に記事を書きたいなと思っていました。

そこで声を変えられたのがこのtheLetterさんが運営する「ニュースレター」でした。noteやブログと違い、自分の好きなオーサーを選び、そのオーサーが書く記事が手元に届いていつでも読めるスタイルがいいなと思って始めました。

現代社会では情報が氾濫しており、読者が本当に必要としているのは、情報の速度や量ではなく、「情報の正確性と提供者の責任」だと感じていました。この信念こそが、このニュースレターの読者基盤となり、最大の資産を形成していると感じています。

初期にエミリーオスター氏から得た学び

その頃、自分も育児の啓発の仕方を悩んでいたので様々な媒体を見ながら研究していました。そんな時に普段自分が愛読しているメルマガ、「ジャバ・ザ・ハットリ」さんの「【週刊】1万ドル以上を稼ぐニュースレターを徹底的に分析したらこうなった」に米国最強の経済学者・エミリーオスターさんのニュースレターが特集されていました。

特に、育児ニュースレターだけで年商8600万円!というのが正直驚きを隠せませんでした。

私がニュースレターを始めた頃の2022年は、コロナ禍で医療者へのヘイトが高まり、またSNS上で過激な啓発の仕方をする様々な集団に嫌気がさし、Xを離れる人が後を絶たなかった時期でした。

特に、「医療啓発は無償でするもの。講演は無償で受けるもの」という業界内の暗黙の了解が蔓延し、良い医療啓発を行っている団体ほど資金繰りが大変だった記憶があります。さらにエビデンスとはかけ離れたエセ医療啓発ほどお金が儲かる仕組みになっており、医療啓発の業界は暗雲が漂っていました。

そこでオルドメディアに自分の書くスペースを持つのではなく、自分自身にメディアを持って発信するシステムが必要と感じていました。

エビデンスを持たせた情報はもっと社会に評価されても良いと考えたのです。

そこで始めたこのニュースレターですが、最初は正直不安を感じていました。なぜなら周囲の医療者でこの啓発スタイルをしている人がいなかったからです。ブログやnoteの方が見に行くのではないか、診療と研究の合間で出来る時間があるのか。

しかし、それはすぐに杞憂だったことがわかります。

下のグラフはこのニュースレターの登録者の年次推移ですが、幸いなことに右肩上がりで登録者は10/15現時点で、42777名の方に登録して頂いております。特に人気記事「母親の年齢と子どものIQ説の検証」は50万PVを突破するなど 、専門性の高い記事が広範な社会的話題として反響を得ました。これは、EBMに基づく情報がニッチな領域に留まらず、社会的な意思決定に影響を与え得ることを証明したと今でも確認しています。

新しい社会還元のカタチ

そして、月々お金を払ってくれているサポートメンバー数も着実に増加していってます。

このニュースレターが3年間、外部の圧力に左右されることなく独立した情報発信を続けられたのは、一重にサポートメンバーの皆様の継続的なご支援のおかげです。サポートメンバーが着実に増加しているという事実は 、提供するコンテンツの質と専門性に対して読者側が積極的に投資をしていることの明確な証だと認識しています。

このメンバーシップによる収益構造は、コンテンツの独立性を保証する上で極めて重要な役割を果たしています外部の広告収入やスポンサーの意向に影響されることなく、EBMに基づく、時には議論を呼ぶようなテーマも公平に取り扱うことが可能になっています。

このような独立した収益源の確保は、プラットフォームの信頼性を向上させ、結果として、提供コンテンツの価値を評価するサポートメンバーの増加という循環モデルを生み出していると考えています。

先ほど書いた通り、このニュースレターを進めていくあたり、自分としては「エビデンスを元にした記事が評価される社会を作ること」が目標として掲げました。それは読者を増やすことや収益を上げることではありませんでした。そして、自分が記事を書いて得た収益を社会に還元したいという思いが強くなりました。

そこで、このニュースレターのもう1つの目標として「記事を書いた収益の一部を支援団体に届ける」ことを掲げました。

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