10代で出産は赤ちゃんにオススメ説は本当か

今回もSNS界隈で話題のネタ検証シリーズです
今西洋介 2024.12.07
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さて12月ですね。12月1本目です。

今年ももう終わりに近づいてますね。

少し仕事が立て込んでいて出遅れましたが、今月も記載していくので宜しくお願いします。

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発端

今回の事の発端はXでの下のポスト内容でした。

これが同じ医者の発言というのは驚きですが、周産期関係の方ではないので専門外だったのかもしれません。

これはよく覚えておいていただきたいのですが、医師も専門外の内容であれば、発信内容はブレていきます。

私も同じ小児科の中でも、普段診療する新生児・感染症・虐待以外の事は専門外なのでなるべく呟かないようにしています。子どもに関するアレルギーや救急などはもっと詳しい先生がいらっしゃるので、その先生方の発信に信頼を置いているからです。

それにしても医者の肩書きで、こう断言されると多くの人が信じてしまうので、専門とする周産期医療者にとっては困ってしまうわけです。

最近女性は若いうちに、つまり10代で子どもを産むべきと推奨?してる一部の雰囲気があり、少し違和感を感じています。

私は産婦人科医ではないので、10代の女性が出産する事の母体へのリスクは専門家にお譲りするとして、私は小児科医ですので子10代の出産が子どもの将来にどう影響を与えるかを検証したいと思います。

10代の母親から生まれる子どものリスク

今からする話は一般論です。

そのため10代のお母さんから生まれる子どもが全てそうだとは限りませんし、10代で出産されたお母さん方を非難する意図では決してありません。

私にも10代で出産されたお母さんをたくさん見てきました。10代でもしっかり育児されているお母さん達も多くいました。

あくまで彼女達を否定する物ではありませんし、データとしてこういう事が言えるよという紹介です。そこは悪しからずです。

まず健康的なリスクとして、低出生体重児や早産が増える事は研究で示されています。

少し古い研究ですが、New England Journal of Medicineという一流雑誌で、1970年から1990 年の間にユタ州で単胎の第一子を出産した 13 歳から 24 歳の白人少女と女性 134,088 名を対象に分析しました。

その結果、10代の若い母親(13~17歳)は、20~24歳の母親よりも、低出生体重児、早産児、在胎週数に対して小さい児を出産するリスクが有意に高かったという結果でした(#1)

また、驚くことに10代の母親から生まれる乳児は死亡率が高い事も研究で示されています。

2023年の小児科一流雑誌Pediatricsで示された研究では、20歳未満の母親の乳児死亡率(出生1,000人あたり8.68人)は、30~34歳の母親の乳児死亡率(出生1,000人あたり4.57人)のほぼ2倍でした(#2)。

また、57個の研究を対象にしたメタ分析では思春期の10代の母親から生まれた子どもは成人の母親から生まれた子どもよりも、体重が明らかに小さい割合や程度が多いという研究結果でした(#3)

このように残念ながら、10代の親から生まれた子どもたちは健康のリスクがつきまといます。

これらは当然、生まれた後の環境も影響がある事も明記せねばなりません。

生まれた後の環境が劣悪であれば、その死亡率や栄養状態も悪くなります。卵が先か鶏が先かという話になります。

どちらにせよ、10代の親から生まれた場合、子ども達にとって、それらのリスクが高くなる事は証明されているのです。そのため、小児科としては生まれた子どもの健康リスクを最小限にするために10代の母親の出産を減らすように努力せねばならないのです。

これらのリスクを軽くするには?

では、これらのリスクを軽くするためにはどうしたら良いのでしょうか?

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