ポルノによる子どもへの悪影響は教育で防げるか
1月4本目です。
早いもので新年が始まって月の2/3が経過しました。
今回は育児の上で避けては通れない「性」の問題です。実は保護者向けに講演を行うと意外と多い質問がこのポルノの問題です。本日はこれを深掘りしたいと思います。
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ある男子生徒と母親の言葉
自分は小児科医として学校、PTA、養護教諭など様々な職種からお呼ばれし、お話をすることがあります。テーマは周産期医療の話、育児休業や産後うつの話が多いですが、性教育や小児性被害など様々です。
小児性被害の講演をした時にはこのような質問をもらう事が最近多いです。
「高校3年生の息子がいるのですが、AVを毎晩見ていていつか性加害者にならないか心配です。AVを見せるのを禁止させた方が良いのでしょうか」
この質問は男の子を持つ母親から頂く事が多いのですが、この2、3年で本当に増えました。おそらく報道でジャニーズの性加害がきっかけとなっているのでしょう。我が子が性被害に遭わないかを心配する親と同じくらい、我が子が性加害者にならないかを心配する親も多いのです。
ある時、高校で性教育の講演を行った際に男子高校生から以下のような質問がありました。講演後にみんながいる中での質問でなく、こっそりと自分の元へ質問しに来てくれたのです。
「自分は彼女がいます。今はまだ無いけどこれから性行為をする事になったら不安です。どうしたら良いかわからない。自分はアダルトビデオ(AV)しか見た事ないから」
彼はきちんとした性教育を受けたことが無いために、自分がAVから学んだ方法だと彼女を傷つけてしまうのではないかと不安になっている様でした。
これは何も彼だけでなく、同じ様な事を思った経験のある方は多いのではないでしょうか。
私に頂いたこれらの質問に共通する言葉は「AV」です。我々が育児をしていく中で、我が子はいつまでも子どものままではありません。やがて迎える思春期に、AVに代表されるポルノとの距離感は親としては避けては通れない問題です。
ネットやSNSでこのポルノの問題は感情的に語られる事が多いです。性被害を受けやすいジェンダーである女性からはこのポルノを全面的に禁止すべきという意見もありますし、男性でも不快感を示す人はたくさんいます。子どもにおけるポルノの影響を教育は抑えられるのか、について冷静にエビデンスベースでお話をしたいと思います。
ポルノの子どもへの悪影響
最近このような話題がSNSで注目を集めています。
子ども達が見るゲーム攻略サイトにエロ広告が普通に掲載され、それが目に止まる様な状況であることを問題視されています。それに対して国や自治体に改善を求める署名活動が話題を呼んでいます。文部科学省はフィルタリング設定の見直しや有償のソフトの導入など、不適切な広告の対策を去年から自治体に呼びかけているが、フィルタリング対策ができていない自治体もあると言います。
まずこの話を進める前に、エビデンスとして示せるものがあります。
それは「子どもにポルノを見せる事は確実に悪影響をもたらす」という事です。昔から「子どもにAVを見せるな」と色んな大人が声を上げていますし、世界各国で子どもにAVを見せる事を禁止している事からも容易に想像が付きます。
下の私の本にも記載しましたが、小児性被害の定義は非常に難しく、世界的に統一されたものがこれと言って無いのが現状です。それでもポルノへの暴露は小児性被害として定義に入れる国も多いです。
では、具体的に子ども達にどのような悪影響があるのでしょうか?
まずポルノへの暴露は、子ども達の性行動を異常化させます。
過去10年間で発表された10歳から19歳の青少年を対象とした5件の研究を総合的に評価したシステマティック・レビューによると、ポルノの露出は以下に示す若者の危険な性行動が増える事を示しています(#1)