再登校を促す不登校支援の炎上からみたエビデンスのある不登校支援
8月のお盆、皆様どうお過ごしでしょうか?
南海トラフの発生予測も高まっていましたが、注意報も取り下げられたようで良かったです。
さてこのニュースレターももうすぐ150回を迎えました。2022年12月に本格始動し約1年8ヶ月経過しましたので、ちょうど月7.5本書いている計算になります。週に2本行かないペースでしょうか。
これだけ続けられたのも一重に読者皆様のおかげです。特にサポートメンバーの皆様には頭が上がりません。これからもなるべく質の高い記事の執筆を継続していきたいと考えています。
さて、今回は最近話題になった不登校支援についての炎上について解説したいと思います。
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不登校支援の炎上
夏休みに入って、子どもの不登校に関してSNSで炎上騒動がありました。
不登校児支援を行う株式会社スダチが東京都の板橋区との連携を開始したというプレスリリースを発表しました(その後板橋区が自ら否定、記事は削除)。
株式会社スダチは、「不登校を3週間で解決する(平均)」という再登校支援メソッドを掲げており、その斬新なアプローチが一部で注目を集めていました。
このメソッドは、不登校の子どもたちを短期間で再登校させることを目指したもので、スダチはこれを強力にアピールしていました。
しかし、その効果については疑念が広がり、多くの人々が「不登校はそんなに簡単に解決できる問題ではない」と感じ、SNS上で批判が噴出しました。また、同社の代表が自らの経歴やメソッドの効果を誇張しているとの指摘もありました。
不登校の当事者団体、家族会、支援者、専門家、教職経験者から板橋区に公開質問状が送れられる事態となりました。
SNS上では、実際に効果があるのか、または単なるビジネス戦略ではないのかという疑念が広がり、企業としての信頼性が問われています。この状況に対し、スダチは適切な説明や対応を求められており、今後の動向に注目が集まっています。
日本の不登校の現状
日本における子どもの不登校の問題は深刻化しています。
令和4年度に文科省から発表された調査結果(#1)では、小・中学校における不登校児童生徒数が約30万人に達し、これは前年度から22.1%の増加を示しています。不登校の増加は過去10年間で連続して続いており、特に中学校では在籍児童生徒の約6.0%が不登校状態にあります。
#1より引用
小学校でも不登校の割合は1.7%に達し、いずれも過去最高の数値となっています。不登校の主な要因として、「無気力・不安」や「生活リズムの乱れ」、「家庭内の不和」などが挙げられています。これらの背景には、長引くコロナ禍により生活環境が変化し、子どもたちが学校に適応しにくくなっている現状があると考えられます。
不登校児童生徒の約55.4%が90日以上学校を欠席しており、長期的な不登校が問題となっています。また、不登校児童生徒の約61.8%は学校内外の機関で相談・指導を受けているものの、残りの約38.2%は十分な支援を受けられていない状況にあります。
このため、教育現場では、個々の児童生徒に応じた支援の強化が求められています。
「不登校児を再登校させる」は苦痛?
では不登校児を強制的に再登校させることは本当に良くないのでしょうか?
科学的に検証してみましょう。