母親の愛とは何か〜母性愛神話を科学する〜
お盆休み、お疲れ様でした。
帰省されて逆に疲れたという方もいるでしょう。
夏休みももうすぐ終わり、新学期が始まりますね。米国でも今日から新学期が始まりました。新学期はドキドキワクワクですが、親御さんは新学期の準備や夏休み中の宿題などで大変ですよね。
ふらいと先生のニュースレターは、子育て中の方が必要な「エビデンスに基づく子どもを守るための知識」を、小児科医のふらいとがわかりやすくお届けしています。
過去記事や毎月 4 ~ 5 本すべての「エビデンスに基づいた子どもを守るための知識」を受け取るには有料コースをご検討ください。今回の記事も登録いただければ最後まで読めます。
母親の愛である母性愛は、長い間人類社会の基盤として崇められ、神聖視されてきました。
しかし、近年の科学研究は、この「母性愛神話」に新たな光を当て、その複雑さと多様性を明らかにしています。
今回の記事では、最新の科学的知見に基づいて、母性愛の実態と神話の間にある溝を探ります。
母親の愛、母性愛とは
小児科医をしていると「母親の愛は素晴らしいものだ」という言葉を耳にします。
これは確かに合っている反面、危険性も伴っていると感じます。
母親の愛つまり母性愛とは、一般的に母親が子どもに対して抱く無条件の愛情や献身を指します。
こんなエピソードを紹介しましょう。
これは有名なインドの聖人、マザーテレサに関するエピソードです。
ある日、マザーテレサがカルカッタ(現在のコルカタ)の貧民街を訪れた際、極度の飢餓状態にある一家を見つけました。その家には母親と多くの子供たちが住んでおり、母親はほとんどの食事を自分では食べず、子供たちに与えていました。
マザーテレサはその家族に食べ物を分け与えましたが、その母親はまず自分が食べるのではなく、食べ物を隣人の家に持って行きました。隣人も同様に飢えていることを知っていたからです。
この行動に驚いたマザーテレサが「なぜ自分たちのために食べなかったのですか?」と尋ねると、母親は「私の子供たちが隣人と一緒に食べるのを見ることが、私の最大の喜びだからです」と答えました。