障害児を殺めた母親の減刑要求の先にあった世界
11月最後のニュースレターになります。
もうあと1ヶ月で今年も終わりとはあっという間ですね。
皆様は今年はどんな年になりそうでしょうか?
今回はエビデンスというよりもセンシティブな内容なので、サポートメンバー専用の記事にしていますが全体の2/3は読めるようにしています。
ふらいと先生のニュースレターは、子育て中の方が必要な「エビデンスに基づく子どもを守るための知識」を、小児科医のふらいとがわかりやすくお届けしています。
過去記事や毎月 6 本すべての「エビデンスに基づいた子どもを守るための知識」を受け取るには有料コースをご検討ください。今回の記事も登録いただければ最後まで読めます。
報道
11月23日、またもや悲惨なニュースが報道されました。
概要としては、去年1月、当時住んでいた姫路市内の集合住宅の1室に、寝たきりで気道確保のため痰の吸引が必要な娘(当時8)を放置して窒息死させた疑いで32歳の母親が逮捕されました。ひとり親家庭で、女児は自宅で介護を受けていた。ほかのきょうだいがいるが、この日は親族に預けて女児と2人だったということです。
そこで多くの医療的ケア児を診てきた自分としては、上記のようなコメントを残しました。SNS上でも賛否両論の意見が錯綜しました。
母親に同情する声や責める声、父親を責める声、男女の問題?に波及するパターンなど様々でした。
中には「この母親には減刑を」という声も見受けられます。
あくまで報道内容しか詳細はわからないので、これがどうという明言は避けますが、我々は障害児を殺害した母親の減刑を求める際に障害児福祉の歴史を振り返る必要があります。
今回はある団体が作った障害児福祉の歴史を振り返っていきましょう。
青い芝の会
今から遡る事54年前の1970年5月29日未明、同様に悲しい事件が起きていました。
横浜市の自宅で当時30歳の母親が、脳性麻痺のあった2歳の長女の首を絞めて殺害。父親は単身赴任で、障害児施設にも預けることができない状態でした。当時の刑法で殺人罪は死刑もしくは3年以上の懲役が課せられましたが、検察側は懲役2年を求刑。その後、横浜地裁は情状酌量を認め、懲役2年、執行猶予3年を言い渡しました。
この時、介護に疲れた末の犯行、子育てに疲れ絶望的になった母親への同情の声が多数上がりました。そして、地元町内会などの減刑嘆願運動となって現れた形となりました。また、身障児を持つ親の会、全国重症心身障害児を守る会なども減刑嘆願運動を行いました。
しかし、この減刑要求に反対した当事者団体がありました。
これが「全国青い芝の会」という脳性麻痺者による障害者差別解消・障害者解放闘争を目的として組織された障害者当事者の団体です。
ドキュメンタリー『街へ出よう〜福祉への反逆・青い芝の会」より
彼らの主張は、殺された子どもの人権を訴え、こういった同情の声に異を唱えたのです。世の中には「善意」に隠れた無自覚な差別があり、それを常識とする風潮を痛烈に批判し続けました。
やがて、それは過激な形となって現れます。